「モチベーションを感じない」日日是好日 歯車農場さんの映画レビュー(感想・評価)
モチベーションを感じない
お茶事の稽古を通して二十四節気の巡りと主人公の人生を淡々と描いた映画。
こう書くと綾鷹かおーいお茶の映画のようだが、果たしてそういう想像を上回れたかどうか。結論から言えばそれは叶わなかったようだ。
ありふれた街並み。畳に座って悟達の域に達してるいつもの樹木希林。和の季節感と人生・日常生活。こんなお題が並ぶと是枝監督を否応なく想起するし彼はそういうのを非常に上手く撮るが、この監督はちょっと狙いすぎて失敗したように感じる。
茶器やお菓子はとりあえず正面からアップのインサート。庭や自然はハイビジョンテレビやビールのCMのような綺麗なだけの撮り方。風景も小道具もセリフも全て深みがありそうでない。一言で言えば記号的だ。あえてそうしたというよりは、監督があんまり茶道や日本の芸道を通して感得する世界観や美意識を汲み取れていないと感じた。
主人公の32まで独身実家暮らしのアルバイターの身分でのほほんと毎度新しい着物着て茶道教室に通い続けているというのはかなり特殊な事だと思うが、そんな彼女の私生活については全然掘り下げずモノローグでぶつ切りに挿入されるだけ。完全に観客置いてきぼりで、今どういう状況・心情なのかも年月ごとの心情の変化もさっぱり分からない。共感どころか彼女についてほとんど何も知ることが出来ない。最低限そこはしっかり描かないと人生の「道」感が全く伝わらないと思うのだが。それは原作エッセイで補完してねという事だろうか?だとしたらこの主役のいる意味とは何なのか。
フェリーニフェリーニ言ってるが時が経たないと分からないものの象徴みたいに扱うのは失礼だ。彼の代表作『道』とこの映画を重ね合わせようとするのも本当に失礼だ。
最後にモジって締め
「この映画で起きることはいつも突然。心の準備なんか出来ない。後はその悲しみに2時間をかけて慣れていくしかない。」
この原作が好きだし樹木さんが先生役ということで観ましたが脚本がご本人ではなくまあ別物ということかと気持ちを落ち着けておりました。
まあ全くの個人的な気持ちではありますがせっかくの映像化なんだからもっとセレモニー的な部分をたっぷり味わわせて頂きたかったです。