「祖母の思い出」日日是好日 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
祖母の思い出
祖母がお茶の先生でした。
茶筅で シャカシャカ 涼しげな渓流のような音を茶室に満たし、一瞬の間。
無音・静寂のあとに「 コトリ・・」と茶筅の柄を碗の縁にそっと落とす、
これを二回やるのですよ。「ししおどし」の音ですねー
大阪の公営団地の一室。
ベランダの下にはせわしいバス通りがある筈なのですが、いつしか障子の外には苔むした庭と樋水のつくばいの姿がありありと立ち上がる。
不思議な魔法の一時でした。
あれはオリジナルなのか、何かの流儀なのか、僕は永く確かめる事もせずに祖母は亡くなりましたが。
先日お墓参りの折、やっと母と叔母たちに訊きました、あの「ししおどし」は何なのか。
皆そんなものは知らないと言い、裏千家では余計な音は立てる筈はないと。
おばあちゃん、
結構なお点前でした。
あなたはたった一人僕のためだけに あの時 あの一回だけ あのお茶をたてて下さったのですね。
思い出しました、心を病んでいた孫はあの夏祖母の家に預けられていたのです。
今もあの日の茶筅とお湯の音は僕の心を浄めてくれます。
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「形にね、心が入っていくの」樹木希林
この、見方によっては薄い映画ですが、廃れていく“絶滅危惧種”の茶道をば、ギャルたちに知ってもらうための“文科省推薦的な”役割もあるかと。
だから万年習い事レベルのユルい黒木華の友人役には、本作では多部未華子さんでしたが、本当はもっと別の人選で、さらにユルいAKBとか「トリセツ」の西野カナちゃんとかがキャスティング的にはもっと良かったんではないかなと思いました。
目的の明確化のためにはね。
核として願われていることは、極めた人たちの死による文化の消滅とか、完結した芸道の過去の遺物化=記録映画化=ではなくて、タピオカティーを飲んでるJK にお抹茶体験を奨めるイベントムービーなんだと思いましたよ、
そしてそれでもいいんじゃないかと思った僕です。
樹木希林先生だって、あの人、たいがいですから。
「エリカ38」を観て僕は樹木希林の神格化をやめました。(笑)