劇場公開日 2018年10月13日

  • 予告編を見る

「茶室と劇場が一体となる至福の時間」日日是好日 ロンロンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5茶室と劇場が一体となる至福の時間

2018年11月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

萌える

茶室の中にゆっくりと流れる時のうつろい。しつらえやおもてなしという日本の美意識を感じることが出来るおだやかでしっとりとした空間と時間。この作品は観ている私達すら音を立てず、画面の中で起きる動きと音、あらわれる色やかたちなどに五感を研ぎ澄まさせることをじっくりと学ばせてくれる。こちらは、お茶の作法には、うとい門外漢。しかし、一つの世界を学ぶために必要な心構えが、その人の声や所作に表れることを擬似体験することが、どれだけ幸福な時間かに気付くことになる。どの世界でも慣れないうちは意識が先行し過ぎてぎこちなくなるのは当然ですが、その世界に没頭して無意識の先にあらわれる所作が自然と一体になる、自然体となった時の美しさに日本の侘びさびの一端が垣間見えるようでもあります。それらの発見によって日本人であることへの感謝の気持ちがじんわりと沸き起こるのが嬉しい。お茶を学び始めるところから、続けていきたいという24年間の心の動きを大仰な台詞ではなく、細やかな表情と所作で見事に演じてみせた黒木華さん。時を経て変化していく様がとても美しく、その声と言葉も本当に心地良く響いた。先ごろ亡くなられた樹木希林さんの気取りのない師匠像は弟子として学び続けたいと思わせるに充分な魅力に溢れ、今だ生き続けているのではないかと錯覚するほどのリアリティに心から感銘を受けた。この作品にとても心が惹きつけられるのは鑑賞する私達にも緊張と集中が求められ、最後に主人公の心とともに解放されて幸福な気持ちに包まれるからです。喧騒を離れ、ゆったりとした時と空間は映画館と一体となり自分を見つめる大切さを教えてくれる。これは本当に素晴らしい体験をするために劇場という大きな空間で見るべき映画だと感じます。

ロンロン