ジム&アンディのレビュー・感想・評価
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カメラの前にいるのは誰なのか
新たなメイキング映画の傑作の誕生だ。ミロシュ・フォアマン監督、ジムキャリー主演の『マン・オン・ザ・ムーン』のメイキング映画なのだが、実在したコメディアン、アンディ・カウフマンを演じるジム・キャリーが撮影中以外でも役から抜け出せず、カウフマンとして振る舞い続け、スタジオに混乱をもたらす様子を捉えている。カウフマンの家族とも対面し、本当の家族のように振る舞ったり、カウフマンと同様にわがまま放題言いまくり、巨匠監督を困らせる。あまりに常軌を逸した行動が映っているので、パラマウントがこの映像を封印していたと言う。
カウフマンは、持ちネタでトニー・クリフトンという歌手を演じることがある。カウフマンがトニーを演じる時もこのようになりきっていたようで、映画の中でトニーを演じる時、ジムはトニーにもなっている。何重にも入れ子構造になって、今カメラに映っているのは誰なのかわからなくなってくる。芝居とは、人間の実存とは何かについて深い思弁を与えてくれる作品だ。
ジム・キャリーという人間の素顔とは。
カメラの前に登場したのは、まるでサンタクロースのような髭もじゃの男。
一瞬、誰かと思いきや、なんとあのジム・キャリーではないか。
実在した奇特なコメディアン、アンディ・カウフマン。
どこまでも人が読めず、何を考えてるのかまるで分からず、
どれだけ嫌われようが、敵を作ろうが、ブーイングされようが、重傷を負うが、
どこまでも独自に、常識にとらわれず、貪欲なまでに笑いを求め続けた
わずか35歳の若さで急逝した伝説のコメディアン。
そんなアンディ役を、ジム・キャリーが大熱演した映画「マン・オン・ザ・ムーン」の舞台裏を描いたドキュメンタリー。
20年間にわたってお蔵入りとされてきた映像が、
現在のジム本人のインタビューと共に明かされていく。
ジムはアンディ役をするにあたって、
亡きアンディとテレパシーのような交信を試みたなど、スピリチュアルに近い役作りが語られ、
撮影の前後でも、完璧にアンディ/トニー役に成り切り、
相手を大声で罵倒する、車の乱暴な運転、大音量でラジカセを流すなど、
監督やスタッフが困惑してしまうほど徹底したものだった。
劇中でアンディが大怪我をしてしまうシーンがあるのだが、
ジム本人の希望でフリではなく、なんと本当に大怪我を負ってニュース沙汰にまでなっていたほど。
本作では、同時に
数々の出演作をフラッシュバックしながら、ジム・キャリーという男の俳優人生も語られる回顧録となっており、
特に、父への想いを語る際、思わず感極まってしまうジムの姿が切なかった。
また、その構成も計算されており、
「成功するためー
自分の姿を作り上げる
その後作り物の自分を切り捨てたいのなら
本当の自分が
好かれるも嫌われるも一
チャンスに賭けるしかない
それか 本当の自分を殺して一
墓場まで持っていくしかない
偽りの姿のままでね」
このジムの発言の直後に「マスク」、「トゥルーマン・ショー」、「エターナル・サンシャイン」を流すという関連性、
また、映画の劇中で、アンディ(ジム)がプロレスラーに思い切り張り倒されるシーンは、なんとあれも同じくジム本人の希望でフリではなく本当に殴られていたことが明らかになり、
その直後には「トゥルーマン・ショー」を流すという、明らかな意図性。
この、真実と虚構が入り混じった世界観の三作品は、
思えば「マン・オン・ザ・ムーン」にも通底しているような気がする。
ジム・キャリーが、自らの人生、演技とは何か、ポリシーについて思い巡らし語られる本作。
なかなか楽しめた。
なお、予習として、
「マン・オン・ザ・ムーン」は当然として、
「マスク」、「トゥルーマン・ショー」、「エターナル・サンシャイン」も観ておいた方がいいと思う。
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