「20年という時間が変えたもの、20年経っても変わらないもの。」ピンカートンに会いにいく Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
20年という時間が変えたもの、20年経っても変わらないもの。
かつて大好きなアイドルがいた人、ぞっこんのアイドルを追っかけしていた人、そしてアイドルに憧れ、自分もアイドルになりたかった人・・・。
そんな青春を抱えたオトナ向けの、"アラフォー・ノスタルジー"である。
20年前に突如解散したアイドルグループ"ピンカートン"。その大ファンだった、レコード会社に勤める松本は、伝説のアイドルの再結成を企画する。
ブレイク寸前だった、"ピンカートン"は、グループの仲違いからコンサート当日に分裂。その幻のコンサートの会場には、小学生だった松本がいた。松本はグループを20年ぶりに甦らせようと、リーダーだった優子に連絡を取る。
優子は、電話オペレーターを掛け持ちしながら、今も売れない女優を続けていた。そして引退したメンバーたちもそれぞれの生活をしている。40歳を目前にして崖っぷちの優子は、"ピンカートン"企画に再起を掛け、松本とともに元メンバーたちの説得のため、会いに行く。
しかし、当時一番人気だった葵だけが見つからない。
実に心優しい脚本である。20年という時間が変えたもの、20年経っても変わらないもの。友情やプライド、本心と建前。相手を思う気持ちが生み出した、ボタンの掛け違い。
優子と葵の再会シーンの脚本の秀逸さ!! "ピンカートン"解散の理由が見えたとき、言いようのない想いが沸き上がってくる。
"オトナ・ピンカートン"の30代の女優たちと、20年前の"コドモ・ピンカートン"を演じる10代の女優たちのシーンを織り交ぜ、クロスオーバーさせるのが実に巧みだ。まるで10代の娘がそのまま30代になったかのような個々の人物設定は、ブレがない。演技も見事だ。
松竹ブロードキャスティングは、スカパーのチャンネルなどを運営している会社だが、オリジナル映画プロジェクトを"作家主義"の理念のもとで企画・出資している。その心意気は素晴らしいし、同じく「東京ウィンドオーケストラ」(2017)も作った、30代の坂下雄一郎監督がオリジナル脚本で挑んでいる。必見。
(2018/1/31/新宿武蔵野館/ビスタ)