「「私は人間」人の尊厳を描いた作品」ナチュラルウーマン ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
「私は人間」人の尊厳を描いた作品
トランスジェンダーの役をトランスジェンダーであるダニエラ・ヴェガが演じているという点でも重要な意味を持つ作品だが、内容的にも社会の中でトランスジェンダーがどのように扱われているのか、人間関係の点でも制度的な点でも重要なポイントと突いた作品だ。
恋人の死に際しても彼女は、葬式に立ち会うことができない。同性婚の制度がなければ、法的にもその権利はないだろう。死んだ恋人の元家族に拒まれ、葬式に出ることすら叶わない。その他、多くの偏見に主人公は向き合わなくなてならない。
一方で、トランスジェンダーに限らず、自分は何者であるのか、自問を促す作品として本作は優秀だ。「お前はどっちなんだ」と聞かれ、主人公は常に「私は人間」と答えるのが印象的だ。男であるか、女であるか、トランスジェンダーであるかの前に人間であるという感性を忘れないこと。当たり前のことをスルーしないことが人間関係に大切なことだ。この問いがあるから、本作は女についての映画ではなく、トランスジェンダーについての映画でもなく、人間の尊厳についての映画になり得ている。
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