「二重三重の映画的技巧」カメラを止めるな! しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
二重三重の映画的技巧
ENBUゼミナール《シネマプロジェクト》第7弾。
通常スクリーンで鑑賞。
近所の映画館が連日満席なため、少し遠出してようやくの鑑賞に漕ぎ着けることが出来た。満員は久しぶりの経験である。
観客たちと大いに笑い、大いに感動して、気持ちがひとつになっていく。映画館の醍醐味を味わい、感無量だった。
観終わったら即、無性に誰かに語りたくなってしまう作品だが、まだ観たことの無い人には決して内容を語るわけにはいかない。それは、あまりにも残酷な仕打ちだ。
何故なら、描かれていることひとつひとつが丁寧な伏線となっており、全編に渡って映画的技巧に満ち溢れているから!
そう云うことだったのかと膝を打ち大いに笑い、最後には感動の波が押し寄せて来る不思議なカタルシスに包まれた。
様々なジャンルがこれでもかと詰め込まる感じである。全てが収斂する爽快感と仕掛けのつるべ打ちに悶絶した。
計算し尽くされた場面展開や、カメラ・ワークの妙が炸裂していた。あるものをひとつの視点から観るのではなくて、あらゆる視点から多角的に観ることで様々な側面が立ち上がって来る。まさに、映画そのものの原点だと感じた。
映画のはじまりは、荷馬車が霊柩車に変身すると云うトリック撮影をしたものだったそうな。目の前にあったものが視線を外した隙に別のものに変わっていたところからの発想だが、これこそ視点を変えることの出発点ではないだろうか。
予算が小規模でも、脚本の工夫と情熱があれば、誰もが楽しめる作品をつくることが出来ることの証明だと思った。
本作の予想外の大ヒットは、映画の可能性を広げた重大な出来事として、きっと映画史に刻まれることだろう。
[以降の鑑賞記録]
2018/12/08:Blu-ray
※修正(2024/07/10)
どのレビューも良いですね!
今作も非常に同意です!^ ^
激奨なのに★3.5もなんか分かります。やっぱりお金がないのが、
わかっちゃうのが残念。
でもそこが良いんですけどね。f^_^;
はじめまして。syu-32さんのレビュー、大変興味深く読ませていただきました。
>あらゆる視点から多角的に観ることによって様々な側面が立ち上がってくる。
それはまさに“映画”そのものの原点だと思います。
この指摘には「なるほど!」と思いました。あらためて、『カメラを止めるな!』には映画の原初的な面白さや喜びが満ちているなと思いました。
それで、syu-32さんが書いておられる、
>映画の始まりは、荷馬車が霊柩車に変身するというしごく単純なものだったそうです。
これがどんな作品なのか、気になって調べてみたのですが、ひょっとして『月世界旅行』で有名なジョルジュ・メリエスの逸話のことでしょうか。
これは、カメラの故障によって偶然撮れた映像だったようで、メリエスはそこから着想を得て、数々の映像トリックを考案したそうですね。