「珍しい作品ではあるけれど」小さな橋で つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
珍しい作品ではあるけれど
子どもである広次が主人公だ。物語は彼の視点とナレーションで進む。
時代劇で子どもの視点というのは初めて観たと思う。それだけ珍しい。
子どもならではの見方や考え方は興味深いものの、逆に言えば時代劇である必要あったか?と疑問にも思う。
時代劇というのは、身分違いの恋とか、武士ならではのままならなさ、もしくは、刀によるアクション、つまり殺陣などが見所となるだろう。
しかし、子どもである広次が主人公となることでこれらの時代劇らしい面白みが失われてしまったように思える。
広次が武士の子であればまた違ったかもしれないが、残念ながら町民の子で、彼の感覚は現代の子とほとんど変わらなかった。
結局は主人公である広次の成長物語であったわけで、ストーリーの落としどころも、ある意味で面白いが、どうしても作中で起こる様々なことが気になって、それらが収まらないまま終わってしまったことは少々残念である。
広次の母親役の松雪泰子は良かった。時代劇似合うんだな。
なんか荒んでいく感じが妙にハマっていた。
あとは、音楽が時代劇らしくないところに触れるべきだろうか。明らかに狙ってやっていると思う。
それが良かったかどうかは何とも言えない。
ここから思うに、時代劇の枠組みをぶっ壊したかったのかなと想像する。
その試みは成功したと言えるのかもしれないが、個人的な感想としては、既存の枠組みに収まった、時代劇らしい時代劇が見たかった。
現代劇っぽい物語と現代劇っぽい音楽の作品ならば他にもたくさん観ることができるからね。
時代劇に求めるものの一番は時代劇らしさだ。残念ながらこの作品にはそれが足りない。
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