「森林火災に挑む消防隊員を過度に英雄視せずに、ありふれた人間らしさを等身大で描いていて好感」オンリー・ザ・ブレイブ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
森林火災に挑む消防隊員を過度に英雄視せずに、ありふれた人間らしさを等身大で描いていて好感
ジョセフ・コジンスキー監督(トップガン マーヴェリック等)による2017年製作のアメリカ映画。原題:Only the Brave、配給:ギャガ。
「トップガン マーヴェリック」がとても良かったので、コジンスキー監督による前作を視聴した。脚本エリック・ウォーレン・シンガー及び撮影クラウディオ・ミランダは「マーヴェリック」でも担当。そして、マイルズ・テラーとジェニファー・コネリーは「マーヴェリック」にも出演。
何より、事実 (2013年アリゾナ州で起きたヤーネルヒル火災)に基づく映画というのが重い。短時間で防火シートの下に潜る訓練をしていて、あんな防火シートで身を守れるのかと思っていたのだが、案の定というか森林火災に立ち向かった消防隊19名全員が生き残れなかったとの結末は、大変にショッキングであった。森林火災の恐ろしさを強く印象づけられもした。
ただ、彼らを過度に英雄視せずに、ありふれた人間らしさを等身大で描いていたところには好感を覚えた。火を持って火を制するというか、一定区画の木を切り倒し焼き払うことにより延焼を止めるという建物の消防隊とは異なる彼らの方法論を初めて知った。火災後、1名が生き残ったと聞いての家族たちの儚いのぞみを、マイルズ・テラーが姿を見せて打ち砕く映像が何とも痛ましい。
精鋭の森林消防部隊、グラナイト・マウンテン・ホットショッツの隊長(ジョシュ・ブローリン)の人物像が、とても魅力的であった。専門家・リーダーとしての優れた判断力・決断力と包容力、裏腹な対人関係での要領の悪さ、妻への深い愛情は有りながら家庭を顧みない仕事への没頭など。
妻役のジェニファー・コネリーも好演であった。「ノア 約束の舟」「マーヴェリック」と見てきているが、初めて魅力的に思え、彼女の真価を知った様な気がする。颯爽と馬を乗りこなす姿。1人生き残り家族の視線のきつさから罪の意識で打ち砕かれているマイルズ・テーラーを、夫の死を悲しむさなか、気遣って言葉をかける姿に、感銘を受けると共に感心させられた。
主人公マイルズ・テーラーも、「トップガン マーヴェリック」で見せたスター性は感じなかったが、赤ん坊が出来たことで改心して成長する若者を懸命に演じていて好感を覚えた。
大規模災害を映すスペクタル映画に成長物語、家族やチーム・仕事愛を盛り込み静かな感動作に仕立て上げた脚本・撮影等含むコジンスキー監督スタッフに拍手。「マーヴェリック」で感じた完成度の高さは、この映画の延長線上にあることを知った。
製作ロレンツォ・ディ・ボナベンチュラ、マイケル・メンシェル、エリク・ハウサム、モリー・スミス、サッド・ラッキンビル、 トレント・ラッキンビル、ドーン・オストロフ、ジェレミー・ステックラー、製作総指揮エレン・H・シュワルツ。
原作ショーン・フリン、脚本ケン・ノーラン、エリック・ウォーレン・シンガー(トップガン マーヴェリック等)、撮影クラウディオ・ミランダ(トップガン マーヴェリック等)、美術ケビン・カバナー、衣装ルイーズ・ミンゲンバック、編集ビリー・フォックス、音楽ジョセフ・トラパニーズ、音楽監修ジョナサン・ワトキンス。
出演は、ジョシュ・ブローリン(エリック・マーシュ)、マイルズ・テラー(ブレンダン・マクドナウ、トップガン マーヴェリック等)、ジェームズ・バッジ・デール(ジェシー・スティード)、ジェフ・ブリッジス(デュエイン・スタインブリンク)、テイラー・キッチュ(クリストファー・マッケンジー)、ジェニファー・コネリー(アマンダ・マーシュ、トップガン マーヴェリック等)。