「かたもみ券」あいあい傘 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
かたもみ券
プロローグでは過去が凝縮されたモノトーン映像が流れる。目を凝らしながらこの内容を読み取りつつ、自殺しようと訪れた小さな町で傘を差しだされるシーンから物語はスタートする。恋園神社でお参りするのが日課であるロクさん(立川談春)。そしてテキ屋の雨宮清太郎(市原隼人)が高島さつき(倉科カナ)と出会い、恋に落ちる。もうこの序盤だけで『男はつらいよ』シリーズの寅さんをモチーフとしたかのような人情物語が展開することがうれしい限り。清太郎はこのまま振られて終わるんだろうなぁと予想できるのがいいのだ。
失踪した父親と会う決意をしたさつき。新しい奥さんと会い、娘とも出会うが父親とはなかなか出会えない。こんな小さな町なのに、なぜ鉢合わせもしないのかとイライラもしてきたのですが、元は舞台劇なんだと後から知って納得。その小さな町が「長野県に近い山梨県」と聞いても、どこだかわからなかった。ちょっとロケ地巡りをしたくなるかのような情緒たっぷりの風景でした。
時折挿入されていた、悪夢でうなされるほどのロクさんの過去の映像。製薬会社の汚職事件に絡んで、秘書であるロクさんが自殺を強要されていたことが徐々に明かされる。25年前ならバブルが崩壊した頃だし、株の暴落によって自殺を考える設定の方が自然かなとも思ったのですが、舞台劇が2007年だと知り、これも納得。とかげの尻尾切りなんてのはいつの時代にもあったことが語られてたようにも感じました。
うんこの会話をしているやべきょうすけと高橋メアリージュンの夫婦漫才なんかよりも、「素敵な彼女できるよ」と言った直後に風鈴がチーンと鳴ったの演出が最も印象に残った。やはり再会シーンには泣けてくるほど、とにかく倉科カナの演技が良かった。また海老車(トミーズ雅)に実の娘さつきを探すよう依頼したのが玉枝(原田知世)だったことも興味深い。彼女の思い切った決断にも拍手を送りたくなった・・・