「復讐に沈む伏龍の目。」ザ・フォーリナー 復讐者 すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
復讐に沈む伏龍の目。
〇作品全体
自分が復讐劇を見るとき、もっとも重点を置くのは復讐心をどう表現するのかというところだ。凄惨な復讐の手段であったり、復讐に対する執着であったり、復讐するに至る因果であったり…方法は多岐にわたる。
個人的に復讐心の表現として一番響くのは、復讐者の目の芝居。
語らずとも伝わる憎悪、悲しみ、そして決意。日常生活にもある感情を更に肥大化させるのは、日常で必ず見る…けれど深くは意識しない、目に宿った感情なのだと思う。
『ザ・フォーリナー』はジャッキー・チェン主演作。「ジェッキー映画」といえば大多数の人が口をそろえて「見どころはアクション」と言うだろうが、この作品は違うと思う。見どころは「ジャッキーチェンの目」という言葉が出てくるに違いない。
今までの若々しくギラギラしたジャッキーチェンとはかけ離れた沈んだ目。そこに宿る負の感情が、彼を知るからこそ更に際立つ。影から現れ、重く暗い目線を送るジャッキーチェンの目は、それだけで復讐心の演出になる。華やかなアクション映画の活劇を知っているからこそ、目から伝わる負の感情をますますくみ取ってしまうのかもしれない。
「龍を起こす必要はない」というセリフはジャッキーチェン扮する元特殊部隊員・クァンに干渉しないことを意味することは間違いない。だが、個人的には、アクションという刺激によって起こさずとも抜群の活躍を見せるジャッキーチェンへ向けた言葉のようにも感じた。
今作のジャッキーチェンは「昇り龍」ではなく「沈み龍」の演技だが、伏せたままでも溢れ出るその存在感と芝居力に、とことん魅せられた。
〇カメラワーク
・ジャッキーチェンの目は確かにいいのだが、カメラワークがいまいち。間延びしたパンワークで繋ぐシーンが多い。アクションシーンは近年の映画に珍しくFIXで撮ったカットも多いが、これを「ジャッキー映画」というくくりで見れば当たり前。小細工不要(アクションの中身はアイデアが詰まっているが)のジャッキーアクションこそが醍醐味なのだから。
〇その他
・屋内のアクションシーン、カメラ内にあるカーペットや棒、椅子がまったく使われていなくて物足りなさを少し感じつつクスっと来た。ジャッキー定番のスペシャルウェポンたちは今回絶対使わないぞ…という意思を勝手に感じてしまう。