アンツ・パニック 巨大蟻襲来のレビュー・感想・評価
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原点回帰
昆虫博士の香川照之さんが、もし同じ大きさで戦ったら一番強いのはトラでもライオンでもなくアリだと言っていた。たしかにアリさんは体重の25倍ものものを運べる、人に例えれば1.5トン、自動車を持ち上げられるほどの力持ち、顎の力も重機級、おまけに軍隊並みの統率力を秘めているから納得です。
蟻の巨大化はSFの古典、「放射能X(1954)」まで遡る、当時はCGも無かったので撮り方次第で大きく見せられる昆虫は格好の材料、子供たちにも身近な存在だけに怖さもひとしおだったでしょう。突然変異のミュータントものは大うけ、味を占め蜂、蜘蛛やカマキリ、バッタにサソリとブームになったが、所詮虫なので火器には弱い、粗製乱造で次第に飽きられた。
久しく恐竜に席を譲っていたがスペイン・フィンランド合作で懐かしい復活、ただ今回、怪物蟻は主役と言うより若者の引き立て役のようで影は薄め、警備の兵隊たちでさえ全滅させられたのに素人の若者が大活躍、バイク仲間の友情やロマンスを軸にしたジュブナイル向けの青春活劇に模様替えしたようです。
巨大蟻は軍の生物化学兵器、昔、砂漠に落ちた隕石のエイリアンの遺伝子で巨大化したそうです、そういえばエイリアンも昆虫の類のようですね、原点回帰でもあるのでしょうか。
エンドロールに流れたのは本作のビデオゲーム、続編も臭わせるなど商魂たくましい怪作でした。
『愛すべきモロンムービー』
自宅(CS放送)にて鑑賞。フィンランド・スペイン合作、日本劇場未公開で、原題"It Came from the Desert"。そもそもは『放射能X('54)』を元にした'89年、Amiga製PC用にCinemawareがリリースした原題と同タイトルのゲームソフト映画化作。ゲーム版と全く同じナレーションから始まり、展開もほぼなぞっているらしい。基本、おバカ映画だが、侮るなかれ、CGIを含めしっかり作り込まれており、シナリオにも無理が少ない。媚びた笑いや内輪受けする様なのも含まれず、気負う事無く気軽に愉しめる。65/100点。
・バイクアクションも悪くなく、荒れ地に砂埃、砂塵を巻き上げ疾走するバイクは絵になると再認識。ライバル兄弟との和解やラブロマンス等も定番中の定番ながら、盛り込まれており、好みの差はあろうが、全篇憎めず可愛いらしい出来栄えであると感じた。
・北欧フィンランドのプロレス団体FCF(Fight Club Finland)に所属するリングネーム“スターバック”ことM.マヤラハティ扮する“必殺マン(Eradicator)”と云うヘルメット被っただけの謎のヒーロー。ピョンピョン跳ねたり、飲酒後、ゲップ迄してしまう『キングスパイダー('03)』に登場した蜘蛛と同じく仲間同士で喋る蟻達。ラスボスであるいかつい女王蟻は飛べない様で、翅は飾りなのだろうか……他にもトホホな設定は数々あれど、その殆どが確信犯に思え、許せてしまう。
・先述通り、ゲーム版と同じナレーションがあり、その67年後の現在からいよいよ本題へ入る。ラスト前のミドルクレジット時はドット絵で本篇のハイライト(主に蟻との攻防)が振り返られる。その後に続くスタッフロールは、クレジットが上下へスクロールする右側で、ゲームソフト版のプレイ画面が流れ続け、エンドコール(ラストカット)もゲーム風になっている。
・A.ミルズ扮する“ルーカス”の持つ携帯の着信音は、ゲーム版のBGMである。撮影は、主にスペインのアンダルシア州アルメリア県ロダルキラルでのロケとフィンランドのスタジオで行なわれ、僅か20日間で終わったと云う。
・鑑賞日:2019年2月7日(木)
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