「「正義」を相手に戦うかすかべ防衛隊!」映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
「正義」を相手に戦うかすかべ防衛隊!
またもやられてしまった。いつも人間味あふれるクレしん映画だけれど、今回はくだらないギャグのオンパレードの中で、最後に人間の本質というか人間の心髄を鋭く突くような結論を導き出す。これ、大人が見てグサッと胸が痛いほどですよ。☆は3.5にしたけど、気持ち的には☆では数えられない単位ですごく好き。
もちろん全体のトーンはいつものクレしん映画と変わらず、カンフー映画のパロディなどを踏まえて、安定のギャグ感で笑って観られる感じ。ただ今回特筆すべきが、映画の最後にしんのすけたちが闘う相手が「悪」ではなくむしろ「正義」の方であり、敵ではなく味方であるという点。正義感あふれる味方が、パワーを手に入れてしまったがために正義を見失ってしまう。その正義感としんのすけたちは戦うのだ!ってこれファミリー向けのアニメですか?っていうくらいの深遠さ。クレしん映画が常に、表も裏も嘘も真実もある人間を愛し見つめてきた極北じゃないのか、って大袈裟なことを思ってしまう。そして最後の最後に繰り広げられる抱腹絶倒の大団円。深遠なことを言っておきながら、作中で最もくだらないギャグで落とし前をつけるあたり、やっぱりクレしん映画たまらない。
しかも今回は、かすかべ防衛隊系作品でありながら、野原一家もかなりフィーチャーされているという点(クレしん映画は概ね、かすかべ防衛隊系作品と野原家系作品とが交互に作られている)。これは個人的に嬉しいポイント。かすかべ防衛隊も野原一家もどちらも好きなので、一作品で両方楽しめるのはありがたい。欲を言えば、もっとしんのすけと風間くんのイチャイチャを見たかったゾ(邪念)。
今回、この映画を観てふと思ったのだけれど、今ハリウッドで流行しているヒーロー映画(MARVELやDCなど)って、実際クレしん映画と実は大差ないのではないか?ということ。映像のド迫力でなんかごまかされているけど、ストーリーの中身って、やってることアメコミ映画もクレしん映画も実はそんなに変わらない(ありえなさも含めて)。まぁどちらも元が漫画なわけだから驚くことでもないかもしれないけど、なんとなくアメコミ映画が苦手と思っている私からすると、「漫画」としてのプライドを貫いているクレしんの方が好感が持てるなぁと思ったのだった。