「木村拓哉と名優たちのムダ遣い」マスカレード・ホテル beshさんの映画レビュー(感想・評価)
木村拓哉と名優たちのムダ遣い
検察側の罪人で新境地を切り開き、本格俳優として進化する木村拓哉が観たくて鑑賞。期待していただけに、HEROの頃の昔の座組みに引っ張り出され、"いつものキムタク"に演出されていたことが非常にもったいないと感じた。
人物トリックによる絶妙なミスリードは東野圭吾の真骨頂。ただし、それは映像の無いミステリー小説特有の技法。映像化する際にはその部分は慎重に表現すべきだが、松たか子が演じちゃダメじゃないか?松たか子だと分からないように演出してるつもりなのかもしれないが、最近、好演が光るダークサイド松たか子そのまんまでバレバレ。眼が見えるの見えないのうんぬんよりも、松たか子が老婆の変装をしてることが曲者過ぎて、犯人探しすることすら馬鹿らしくなる。
本筋とは関係ないマスカレードなお客様とのすったもんだとエエ話の繰り返し、その度に同じ音楽が大げさに流れるTVドラマ的演出も単調でめちゃくちゃくどい。飽きることこの上ない。
火サスの崖の上でペラペラとネタばらしするアホな犯人のように、観客に向けて解説する終盤は、松たか子でさえも鈍臭い演技に映る。原作は未読だが、こんなに飲み込み難い犯人の動機なのか?
解決のキーとなる文鎮もこれ見よがしに何度も映されるし、観客の理解力を低く見積もっているのか。
日本の実力派俳優をふんだんに起用し、お金のかかったセットだし、優雅で豪華な大衆娯楽映画になっただろうに残念。
大ヒットのすべり出しとなっていることは木村拓哉はじめ、プロモーションにもしっかり力を入れており流石の一言。
面白いものに正当な評価があり、駄目なものにはそれなりの評価が下されれば、日本映画製作も変わるのでしょうね。ありがとうございました。フォローさせていただきます。
映画をたくさん観るお客さんが少ないからではないかと思います。日本の年間の平均鑑賞回数は1.3本ですから。相対評価しなければ辛口にはなり難いのだと思います。満足する方が多いこと自体に罪はないとは思いますが、だからと言って映画の作り手が、高い水準の作品を目指さないのは罪だと思うのです。大衆娯楽の極みであるディズニーだって素晴らしい作品はたくさんあります。大作映画のクオリティを上げないと、日本マーケットの水準が上がっていかないと思うのです。大作映画の監督にTVドラマディレクター上がりの年配者を起用するのではなく、若い才能をフックアップして大抜擢した方が面白い気がするのですが。このままではいつまでたっても日本からデミアン・チャゼルやライアン・クーグラーは生まれないと思うのです。大物芸能事務所も巨匠原作作家も安心できる関係性と数字の実績があり、バランスよくまとめる手腕がものをいう現実があるのかも知れません。重鎮がいつまでもはびこるエンタメ、メディア、コンテンツ業界全体のヒエラルキー構造を変えないとダメなのだろうなと思います。