「永遠の宴へ」ヴィクトリア女王 最期の秘密 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
永遠の宴へ
このところ英王室モノを題材とした作品が続いているのは恣意的なのかどうかはさておき、今作は比較的現在に近い第二次世界大戦前の頃のビクトリア女王の話である。
今日の、ブレグジットや移民排斥等、何かと問題が噴出しているイギリスへの自己振り返りを狙ったのか、それとも外国への自国の懐の深さみたいなものを宣伝したいのかのきな臭さが鼻につくのは、かなり穿った観方なのだろうと少々反省w
まぁイギリス一番のセレブレティに気に入られるにはどれだけのきっかけと運を引寄せる力があるのだろうと思って観ていたら、その核心はあまり語られない。たまたま長身、そしてインド人特有の彫りの深さの甘いマスク、好奇心旺盛さと人なつっこさといったことが女王に響いたということ、そして女王も又、老いと衰弱、政治的激務での疲労がベースにあっての『お戯れ』といったタイミングなのであろう。運だか縁だか、巡り合わせの中でこういう関係性が出来るのもドラマティックで題材にし易いのであろう。
“淋病”の原因をもっと深く聞き出したい欲求はあったが、ストーリー上、敵対する宗教等の免れきれないネガティヴ事情、いわゆる“ファクト”であっても、恋は盲目ということで退ける女王の権力への執着は、やはり今も昔も変わらない人間の業という他はない浅ましさである。凄く美談で括られようとしているのだが、何故だか安っぽさしか感じられない中で、やはり自分が一番共有し心情を汲めたのは、一緒にイギリスに来たモハメド。多分、この人の考えが一番一般人に近い思考であり、しかも相当頭の回転が速い人だろうと感じる。あれだけ宗主国であるイギリス人に“野蛮”だと吐き捨てられるのは却って清々しい位である。そう、いつでも権力者は野蛮であり無慈悲だ。相手のことなど微塵も感じないし、共感などしない。阿ったり、忖度したり、その人間の浅ましさをセットの豪華絢爛さのオブラートに包みつつシーンに織込んでいる所はこの作品の素晴らしさであると思う。本当に『権力者は全員死ねばいいのに!』と、改めて強く願う作品である。