「二人の経緯に満ちた異文化交流を卓越したタッチで描く」ヴィクトリア女王 最期の秘密 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
二人の経緯に満ちた異文化交流を卓越したタッチで描く
『リトル・ダンサー』のリー・ホールが脚本を手がけ、『クイーン』のフリアーズが監督を務めただけあり、本作は職人芸ともいうべき物語と映像の滑らかな連続が観る者を惹きつける。特に冒頭、主人公がインドから英国へと渡り、さらに女王との出会いを果たす経緯など、描かねばならない場面は盛りだくさん。それでも作り手は驚くほどの手際の良さで、観客を物語の内部へすーっといざなっていく。この筆致には本当に驚かされた。
インド統治下のヴィクトリア時代、誰もが階級下の者、ましてや統治される側のインド人を見下してかかる中、よりによって女王自身が率先して相手に敬意を捧げ、文化の扉を解き放とうとする姿は美しい。また、やりとりに終始振り回される(古い考え方の)側近達の姿を皮肉や笑いをまぶしながら痛快に描く様は最高だ。
それはどこか、人と人の間に巨大な溝が生まれつつある現代へ向けたメッセージであるかのように思えてならない。
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