劇場公開日 2018年5月25日

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「理想の家族の肖像」妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII エイブルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5理想の家族の肖像

2018年6月5日
PCから投稿

泣ける

家族映画の巨匠の集大成と思う。
観て数時間経っても、ぼーっと、私は物語世界をさまよっている。

現代の家族を題材に喜劇となると、切実ではあれどうも下世話な話題の解決にこぢんまり終始してしまうところ、本作で扱われる事件は現実の家族に切実に迫るもので、また同時にいつの時代にも通じるようだ。

もともとのメインタイトルをあえてサブに配したのに合点がいった。キャストの顔ぶれは同じだが小林稔侍等脇役の人物設定はシリーズ1・2・3どれも異なる。ストーリーに合わせて設定は後付けされているのかしら。考えてみれば「家族はつらいよシリーズ」はシリーズものとしては珍妙だ。
今回、その人物設定がバッチリはまっていた。筋書きだけ並べれば、ご都合主義とあとで誰かが言いそうな展開も、いや、この家族ならこうする、という十分な説得力がある。
無駄のない画の中で立ち尽くす各々のたたずまいは、葛藤してなお美しく迫った。監督の敬愛する小津作品の影像を思い起こした。「人間の品性」を見た。理想の世界がそこにある。

「家族はつらいよ1」のドタバタコントでげんなりさせられたので「2」は見送った。他近作でも山田洋次には嫌気がさしていた。今回「3」も見送るつもりだったが、暇つぶし以外の何物でもない筋合いで観た。私の鼻柱はへし折られた。

エイブル