「高度な伏線が予測不可能な秀逸な脚本」目撃者 闇の中の瞳 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
高度な伏線が予測不可能な秀逸な脚本
これは二度見したくなる、綿密に計算され尽くした脚本。高度な伏線が張り巡らされ、予測不可能な展開と斬新な結末を楽しめる、優良な台湾製サスペンススリラーである。全国12館と地味に上映されているが、観て損はない。
台湾アカデミー賞"第54回(2017)金馬奨"では、主演男優賞をはじめ5部門にノミネートされた。金馬奨はエンターテイメント性の高い作品を選ばれにくいので、受賞は逃したが、台湾で大ヒットを記録している。
主人公シャオチーが、中古で購入した愛車が、巧妙に修理された事故車とわかり、しかも、自分が9年前に偶然目撃した交通死亡事故に使われていた車だった・・・。
当時は見習いだったシャオチーは、今やスクープ事件を追いかけるバリバリの中堅新聞記者。この事件を調べはじめると、犯人は逃走して不明、瀕死の重傷を追った唯一の被害者も行方不明になっていた。そして単なる目撃者だったはずの自分も関わる新事実が次々と明らかになっていく。
事件に直接関わる人間は7人。一見、無関係に見える全員が、ひとつの交通事故を接点につながっている。そして犯罪者でもあり被害者でもある意外性。その真相は最後の最後まで分からず、どんどん引き込まれていく。
カーアクションなどのカメラワークも質が高く、VFXを効果的に使った事故シーンや関係者の回想が何度も繰り返されながら、映像編集によって、謎を解き明かしていくスマートさがいい。
原題サブタイトルの"Who Killed Cock Robin"は、マザーグースの有名な童謡。日本では北原白秋が「駒鳥(コマドリ)のお葬式」として訳詞紹介しているが、その内容が殺人をイメージさせるからか、推理作品にたびたびモチーフとして使われている。特に本作のような連鎖的なイメージにはピッタリ。
(2018/1/31 /シネマカリテ/シネスコ/最上麻衣子)