「外国映画をそのまま日本で撮り直してみた実験作」あの頃、君を追いかけた uttiee56さんの映画レビュー(感想・評価)
外国映画をそのまま日本で撮り直してみた実験作
他のあらゆる芸術と同様に、映画というものは、製作国の文化・言語・歴史を、暗黙のコンテキストとして作られるものである。(この点を最大限に利用して演出プランを組み上げた作品に「この世界の片隅に」がある)
本作は、そのようなコンテキストを一切無視して、外国映画の演出をそのままに、日本で撮影し直したらどうなるかを実験した作品である。
言うまでもなく、その結果は大失敗だ。日本では意味不明なギャグの数々、日本ではあり得ない光景の数々、日本人ではあり得ない行動の数々に、もはやストーリーは一切頭に入って来ず、上映開始後5分で帰りたくなった。退席しなかったのは、単に通路が狭くて通れなかったためである。
撮影は長野県で行われたようだが、全裸で過ごしてる家族が長野にいる訳ねぇだろ!長野の寒さなめとんのか。日本は、南国の台湾とは違うんだよ。
原作は90年代の台湾を舞台としているが、本作は現代の日本を舞台としている。そのため、これは日本はもちろん、台湾でも現代ではあり得ないのではないかと首を傾げる場面に多々出くわすこととなった。
原作のスタッフが本作を見たら、絶対に怒るだろう。我々は、日本映画として再構築された本作を見たかったのに、これではただのパクリではないか、と。
原作リスペクトって、日本では考えられない制服デザインにすることですか?原作に似ている役者を起用することですか?絶対に違うでしょう。
せめて言葉が中国語から日本語になったことで、人物の感情の動きやストーリーがわかりやすくなったという点でもあれば良かったのだが、それすらもない。むしろ原作にあった必要な演出が何故か欠けていて、感情の動きが全く分からなくなった。これはもう、単純に演出が下手糞だとしか…
どうしても本作を見たいという方には、原作は見ないことをおすすめする。原作は若さ故に実らぬ切ない恋を描いた名作で、現在Netflixで公開されているが、これを見てしまうとどうしても本作と比較してしまうから、以上のような感想になってしまうだろう。
自分にとって最悪だったのは、今年公開の日本映画の中ではずば抜けた傑作(アンチを呼び込むのも嫌なのでタイトルは伏せるが、私の他レビューを見て頂ければわかる)の後に、本作を鑑賞してしまったことだ。せめて逆の順番ならばマシだったのだが…。
過去どんなにつまらない映画でも0.5点などという点数を付けることはなかったが、つまらないだけでなく観客をバカにしている映画には最低点を進呈せざるを得ない。