劇場公開日 2018年1月13日

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「現代アートシネマの最前線」わたしたちの家 comeyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現代アートシネマの最前線

2023年9月18日
PCから投稿

藝大大学院の修了作品としては同窓の先輩・濱口竜介の『PASSION』が有名だけど、それに匹敵するすばらしい長篇デビュー作。ニューヨークの小さな映画祭で見たとき、いまの映画の世界を知りつくした見巧者たちが、そろって感嘆を口にしていたのを、よく覚えている。

すぐれているところは数多い。画面の構成力、照明の操作、編集のリズム、全体のトーンの見事な統一。白とも黒ともつかない「あわいの世界」の空気感を映像でとらえるのは物凄く難しいが、この映画はそれにほとんどの場面で成功している。ともかくそこをきちんと評価するのがスタートライン。

文句なく今の世界の映画にまっすぐつながっている感受性と技術。一度も国外で映画の勉強などしたことがないのにここまで到達できるのは立派な才能。

惜しむらくは、踏み込みが弱い。曖昧で意味ありげな気配が、要するに何なのかを映画の中で描かれないとしても作り手は完全に把握していなければ。それをやっていない映画は日本国内では大きな顔で上映されて称賛もされるかもしれないが、国外では通用しない。

だけども、そうした弱点を上回る魅力があるのも確かなんだよね。

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milou