「世知辛くても、生きていかなければならない。」デジモンアドベンチャー tri. 第6章「ぼくらの未来」 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
世知辛くても、生きていかなければならない。
「デジモンアドベンチャー」劇場版シリーズ第8作。
「デジモンアドベンチャー<tri.>」六部作第6部。
レンタルDVDで鑑賞。
イグドラシルとホメオスタシスの思想戦争によって、世界は崩壊直前までいきましたが、選ばれし子供たちの苦渋の決断によってそれは回避されました。しかし、その決断とはとても世知辛くて切なくて…。この六部作は子供向けでは無かったんだなぁ、と云う印象を改めて強くしました。
子供時代に、所謂“無印”から一連のシリーズを観て来た人々が大人になり、現実世界の激動する時の流れの中で、様々な経験を経て来たからこそ、心に刺さって来るテーマを扱っているように感じました。デジモンの要素を除けば、現実と陸続きの世界観をつくり上げていたからこその芸当かと…。
思想戦争の発端が、そもそも両者の得手勝手に起因しているし、それに完全に振り回されてしまった子供たちですが、これらの出来事を通して一回りも二回りも成長出来たのではないかなと思いました。若干、急激な成長促進でしたが…。
世界は決して単純なものでは無く、楽しくて明るいことばかりが存在しているわけではない。良いことがあれば、それと同じくらい辛くて苦しいことも溢れている。しかし、嫌でもこの世界で生きていかなくてはならない。たとえ、十字架を背負うことになってしまったとしても…。
肯定したくない、でも否定は出来ない。二元論では片付けられない、ある意味理不尽過ぎる世界の真実に抗おうとした彼らの戦いを、心の底から称えたい心境に駆られました。
クライマックスのバトルは荘厳で、悲しみを湛えたエモーショナルなものでしたし、未来に向かって踏み出した子供たちに幸あらんことを願いたくなるラストも含めて、最後の最後でやっとまともな物語を観られたような気がして感無量でした。