「伝説の一戦とフィラデルフィア・フリーダム」バトル・オブ・ザ・セクシーズ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
伝説の一戦とフィラデルフィア・フリーダム
今年もテニスの全米オープンが開幕した。
会場であるナショナルテニスセンターは、2006年にその功績を讃えてビリー・ジーン・キングの名が冠せられた。
この映画は、そのビリー・ジーン・キングとボビー・リッグスとの間で行われた伝説的男女対戦にまつわる物語だ。
この一戦は、女性差別との戦いの矢面に立ったキング夫人の活動の象徴として語り継がれている。
映画のタイトルは、このイベントのタイトルそのままである。
この試合にキング夫人が勝利(3セット先取のストレート勝ち)したことで、女子ツアーが興行として成立するようになった。
折しも、現在開催中の全米オープンテニスにおいて、エリーゼ・コルネ選手が試合中にTシャツを着替えたことに主審が警告を与え、試合後に協会が警告は誤りだったと認めたことが話題になっている。(2018/8/28)
試合中の着替えは認められているのに、女子選手にだけ警告を与えるのは性差別という訳だ。
ま、これは余談。
この映画では、伝説の一戦がクライマックスになってはいるが、この試合を描くことばかりがテーマではない。
女性差別と戦い、その後同性愛蔑視とも戦うことになるビリー・ジーン・キングと、彼女を支えた当時の夫、同性愛に目覚めさせた恋人、女子テニスのツアーを立ち上げ自力で各地を転戦する選手仲間たちの姿を、愛情深く映し出している。
殿堂入りまで果たしたボビー・リッグスが、
本気で女性を蔑視していた訳ではなく、
もう一度脚光を浴びたくて自ら企画したアイディアだったというのは、恐らく事実だろう。
キングにとっては世間との戦いだったかもしれないが、リッグスにとっては自己再生の戦いだった。
あきれるほどに道化を演じるリッグスの姿が、過去の栄光を忘れられない引退したスター選手の哀愁を匂わせている。
態度や発想の不純さに反して、真剣にこのイベントに取り組む裏の姿も描かれており、疎遠だった息子、別れた妻との関係が修復されたことにほっとする。
久々にエリザベス・シューに会えたことにも感激!
また、仲間(あるいはライバル)の女子テニス選手達の複雑な思いもある。
プロとしての上昇思考とライバル意識、妻や母として過酷なツアーに参加することの負担感、自分達の未来を託した希望と友情。
彼女達全員(フィラデルフィア・フリーダム/byエルトン・ジョン…!)の戦いでもあった。
弁護士である夫キング氏の献身的な妻への思いやりにも敬服する。
自分も夫の立場ではあるが、妻に対してあれほど献身的にはなれない…と、反省しきり。
ライバルのマーガレット・コート夫人の横にも、寄り添い支える夫の姿があった。
試合のシーンは少し迫力に欠けるが、過度な演出がない分、物語性を損なわない。
最近のCGやクローズアップ(寄せ)を多用してスピード感や迫力を出す技法を使うことはできたはずなので、あえての演出だと理解する。
試合前のイベント演出がド派手だが、わりと忠実に再現しているようだ。
アメリカではよく知られているのだと思うが、かなり大々的に開催されたイベントだったようだ。
選手入場の実況アナウンスで、女優のように美しいと表現されるが、当時のアメリカではそんな評価だったのかなぁ?
インタビュー映像で一瞬映るクリス・エバートは美人だと思うが。