「ピンク色のナヴィ」アバター ファイヤー・アンド・アッシュ レントさんの映画レビュー(感想・評価)
ピンク色のナヴィ
シリーズ三作目にしてついに核心的真実が明らかに。
キリが見たエイワと思しきその姿、それは人間のようなピンク色の肌を持つナヴィの姿(すくなくとも私にはそう見えた)であった。
以下この事実を前提に本シリーズについての自分なりの考察をしてみた。
まず本作ではスパイダーの存在が鍵となっている。彼はアバターのジェイクとは違い純粋な人間なためマスクなしではパンドラでは生きられない。酸素マスクが切れて死の間際であった彼をキリの望みをかなえるようにエイワが救う。エイワが人間であるスパイダーを受け入れたのだ。
思えば一作目では人類とナヴィの遺伝子を組み合わせたアバターのジェイクがエイワによって受け入れられた。
スカイピープルの彼を殺そうとするネイティリが向けた毒矢の矛先に聖なる木の精がとまり、彼女を思いとどまらせる。そのあとたくさんの木の精がジェイクの体にまとわりつくことでネイティリはエイワが彼を使わしたと思い込む。そうして二人は結ばれるがジェイクがスパイであったことが明らかとなり、またオマティカヤ族の住処も人類により破壊されジェイクは部族から追放されてしまう。
彼がネイティリたちの信頼を取り戻すためには彼らの中で英雄として語られてきたトゥルークマクトとなるしかない。そしてジェイクは見事にトゥルークを乗りこなし彼らから信頼を勝ち取る。
ナヴィたちのリーダーとなった彼は多くの仲間を率いて人類たちとの戦いに勝利し、部族長となり、ネイティリとの間に子供をもうける。人間の遺伝子を持つアバターとナヴィの子孫を。
一作目の物語が何かとご都合主義的であったことがこの三作目にしていまから見直すとなるほどと思えてしまう。
ジェイクがオマティカヤ族に受け入れられたこともネイティリから愛されたことも、凶暴なトゥルークを容易く乗りこなせたこともすべてエイワが仕組んでいたということなら合点がいく。
エイワはパンドラの生物を自由に操ることができるからトゥルークもジェイクに乗りこなされるよう仕向けたと考えられる。
ちなみにエイワは植物の根を媒介とするネットワークによりパンドラの動物や植物を操ることはできても地殻変動やら気候変動には対処できない。だから火山の噴火で被害を受けたアッシュ族たちはエイワを逆恨みして今回ジェイクたちの前に立ちはだかることとなる。
なぜエイワが人類の遺伝子を持つジェイクとナヴィたちを結び付けたのか。もっといえばそもそもエイワが人類をその豊富な天然資源で誘惑し惑星パンドラに引き寄せたのはなぜなのか。
その目的はただ一つ、異種交配によりパンドラの生物たちをより遺伝的に強化するためだったのではないだろうか。
もともとパンドラの生物たちは野生動物は哺乳類と爬虫類の中間生物のような姿をしている。またナヴィたちはホモサピエンスとネコ科の動物を掛け合わせたかのような姿だ。
すなわちこのパンドラのかつての住人たちの記憶を有する意識集合体のエイワが一番に望むことはパンドラの住民たちの繫栄であり、そのために彼らを遺伝的に強化するためにパンドラの生物同士の異種交配を繰り返してきた経緯があるのではないだろうか。そしてパンドラの中での異種交配に限界を感じたエイワはさらなる遺伝子強化のために遺伝子が遠く異なる人類を引き寄せたのではないだろうか。
人類がパンドラの豊富な天然資源を目当てに植民地化しようというのも実はエイワが仕組んだことであり、人類も所詮はエイワの手の中で転がされているだけなのではないか。
現に人類による生態系破壊の恐れが生じれば自己防衛システムが働きパンドラ中の生物が人類に襲い掛かり彼らをせん滅してきた。
一作目では直接エイワが命じたように描かれてきたが二作目以降はまさにキリストをもじったキリに救世主としての役割を演じさせている。
キリが見たエイワのあの姿、人間の肌を持つナヴィ、人間とナヴィの遺伝子が結合した姿を思わせることからそれがエイワの意思であるかのように思われる。ナヴィと人類を結合させ、より強い生命体を生み出すのがエイワの狙いなのではないか。
またスパイダーがナヴィ化してゆく様から見て、もはや異種交配どころかエイワは直接人類のナヴィ化をも目論んでいるのではないか。そうしてパンドラを繁栄させるために。
そしてこれはキャメロンがこの物語を通して訴えたいことでもあるのかもしれない。劇中ではネイティリがピンク色の肌を持つスパイダーを忌み嫌う。人類により父や息子、故郷を奪われた彼女にしたら人類は憎んでも余りある存在。スパイダーもその人類の一人。もちろんスパイダーが彼女にひどいことをしたわけではないが彼女の憎悪は同じピンクの肌を持つスパイダーにも向けられる。これは現実世界で今も延々と続く人種差別、肌の色により差別を繰り返す人間社会を風刺したものである。
そして本作では青い肌のナヴィとピンクの肌の人類の結合した姿のエイワが描かれる。もし肌の色の違いで今もなお人間社会で差別が起こり続けるのならいっそすべての異なる肌の色が混ざり合えばいいのではないか。黄色人種、白人、黒人、すべてが混ざり合えば肌の色の違いから起こる差別など無くなるのではないか。監督はそんな肌の色の違いで差別が無くならない人間社会への批判の思いをこの作品に込めたのではないか。
とまあ、自分なりにこのシリーズの込められたテーマを考察してみたが、まったくの見当違いかあるいはこれからシリーズが継続するうえで予想外の展開が起きるやもしれず、こんな想像力の貧困な自分の拙い考察など裏切る展開を期待したい。
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