「【81.2】アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」アバター ウェイ・オブ・ウォーター honeyさんの映画レビュー(感想・評価)
【81.2】アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』批評
作品の完成度
前作から13年という歳月を経て公開された続編。ジェームズ・キャメロン監督が構想に10年以上を費やしただけあり、映像技術の革新性は群を抜く。特に水中世界の描写は驚異的で、光の屈折や水の流れ、生き物たちの動きがCGであることを忘れさせるほどのリアリズム。3Dとハプティック技術を駆使した上映形式は、観客をパンドラの海へと没入させる体験型のエンターテイメントとして完成されている。物語は家族の葛藤と成長を中心に据え、前作のような勧善懲悪の単純な構図から一歩進んだ人間ドラマを展開。しかし、その物語の骨格はやや古典的であり、目新しさに欠けるという批判も存在する。それでも、圧倒的な映像美と壮大なスケール感は、"シネマ"の未来を提示する一つの到達点。興行収入の成功は、この作品が多くの観客に受け入れられた証明であり、映画史における重要なマイルストーンとしての価値は揺るがない。
監督・演出・編集
ジェームズ・キャメロン監督の、視覚効果に対する飽くなき探求心が結実。HFR(ハイ・フレーム・レート)を巧みに利用し、アクションシーンの躍動感や水中世界の滑らかな動きを表現。特に水中での戦闘シーンは、重力や浮力を意識した独特の演出で、これまでのアクション映画にはない迫力とリアリティを生み出している。編集は、約3時間12分という上映時間を感じさせないほどテンポが良い。物語の緩急をつけ、美しい風景描写と緊迫したアクションシーンをバランス良く配置。これにより、観客は物語に引き込まれ続け、長さを感じさせない。水中でのアクションと、陸上での家族のドラマが交互に描かれる構成は、物語に深みを与え、観客の感情を揺さぶる。
キャスティング・役者の演技
サム・ワーシントン(ジェイク・サリー)
元海兵隊員からパンドラの原住民ナヴィとなったジェイク。前作の荒々しさから一転、家族を守る父親としての葛藤と責任感が演技に深く刻まれている。アバターとして全身CGで表現されるジェイクの感情を、モーションキャプチャーを通じて繊細に表現。特に、子どもたちとの間に生じる溝や、家族を守るために新たな土地へ逃れる決断をする際の苦悩は、視覚的な表現だけでなく、彼の声と動きから真に迫るものが感じられる。
ゾーイ・サルダナ(ネイティリ)
ジェイクの妻であり、オマティカヤ族の戦士であるネイティリ。前作では気高き戦士として描かれた彼女が、今作では母親としての強さと愛を体現。子どもたちへの深い愛情と、人間への怒りを同時に表現する複雑な感情を、モーションキャプチャーを介して見事に演じ切る。特に、家族を守るために戦う際の猛々しさと、息子を失った際の悲痛な叫び声は、観客の心に強く響く。
シガニー・ウィーバー(キリ)
ジェイクとネイティリの養子であるキリ。前作で命を落としたグレース博士の娘であり、パンドラと神秘的な繋がりを持つ不思議な存在。実年齢73歳(公開当時)のシガニー・ウィーバーが、14歳の少女を演じるという挑戦的なキャスティング。彼女の演技は、キリの繊細な感受性や、自らの存在に対する戸惑いを巧みに表現。特に、水中での神秘的な体験をするシーンは、その表情から内面の葛藤が伝わる。
スティーヴン・ラング(クオリッチ大佐)
前作で命を落としたクオリッチ大佐の記憶が、アバターの体に移植された"リコンビナント"として復活。前作の冷酷な悪役としての側面に加え、人間的な感情の揺れ動きが加わった新たなキャラクターとして描かれる。ラングの演技は、肉体的な強靭さだけでなく、復讐心に燃える冷酷さと、どこか人間的な苦悩を秘めた複雑なキャラクターを見事に表現。
ケイト・ウィンスレット(ロナール)
メトカイナ族の族長トノワリの妻で、ツィレヤやアオヌングの母親。妊娠中のため、夫を支え、家族を守る強い女性として描かれる。水中での活動に特化したメトカイナ族の姿を、モーションキャプチャーを介して繊細に表現。
脚本・ストーリー
物語は前作の10年後。ジェイク・サリー一家は、人間からの侵略者と再び対峙することになる。家族を守るため、彼らは海の民メトカイナ族の元へ身を寄せる。ストーリーの中心は、家族の絆と成長。陸の民であったサリー家が、海の民に受け入れられるまでの葛藤、そして人間との新たな戦い。しかし、物語の構成は比較的シンプルで、前作同様の"人間vsナヴィ"という構図をなぞる部分も多い。そのため、ストーリー自体に斬新さはないとの声も。しかし、その単純な物語を、圧倒的な映像美とキャラクターの感情の機微で補完し、観客を惹きつける力は健在。
映像・美術衣装
特筆すべきは、パンドラの海を舞台にした映像美。生命感あふれる色彩豊かなサンゴ礁、神秘的に発光する海洋生物、そして水中での浮遊感や光の描写は、CG技術の極致。モーションキャプチャー技術もさらに進化し、ナヴィたちの表情や感情表現がより豊かになっている。美術面では、海の民メトカイナ族の集落や、彼らが操る水中生物のデザインが秀逸。衣装は、自然の素材を生かしたデザインで、それぞれの部族の文化や生活様式を反映。細部までこだわり抜かれた美術は、パンドラという世界観をより強固なものにしている。
音楽
ジェームズ・ホーナーに代わり、サイモン・フランジーンが音楽を担当。ホーナーの作ったテーマ曲を継承しつつ、海洋の神秘的な雰囲気を表現する新たな楽曲を制作。特に、水中シーンでは、水の音や生き物の鳴き声をBGMと融合させ、没入感を高めている。主題歌は、ザ・ウィークエンドによる「Nothing Is Lost (You Give Me Strength)」。映画の壮大なスケールと、登場人物の感情を表現する力強い楽曲。
受賞・ノミネート
第95回アカデミー賞において、視覚効果賞を受賞。作品賞、美術賞、音響賞にもノミネート。第80回ゴールデングローブ賞では、作品賞、監督賞にノミネートされる。
作品 Avatar: The Way of Water
監督 ジェームズ・キャメロン
113.5×0.715 81.2
編集 退屈
主演 サム・ワーシントンB8×3
助演 ゾーイ・サルダナB8
脚本・ストーリー 脚本
ジェームズ・キャメロン
ジョシュ・フリードマン
B+7.5×7
撮影・映像 S10
美術・衣装 S10
音楽 A9