「近代装備の大型海洋生物漁はアガる」アバター ウェイ・オブ・ウォーター くりあさんの映画レビュー(感想・評価)
近代装備の大型海洋生物漁はアガる
よかったところ
近代装備で異世界の大型生物を狩る泥臭いリアリティ。
捕鯨業者の動きや装備。母船、航空機、潜水艇、追い込み銛撃ちの小型艇、回収のカニの役割分担と連携。
あの5〜10分はアガった。
予期せぬ反撃を受けての対応も、混乱してもたつくところも含めて緊迫感あって良い。
スカイピープルを指揮する女性将軍は魅力的なキャラクターだ。
マスタースレイブ式外骨格でサンドバッグを殴る蹴るできるほど安定し、追加腕でコーヒーを飲めるほど自分の体と一体化して使いこなしてる。
ヨタついていた捕鯨業者とは比べ物にならない乗りこなし、きっとこの将軍も現場叩き上げの軍人だ。
よくなかったところ
古臭いストーリーと露骨な偏向思想。
仮に舞台が現代アメリカで、
「前作で犯罪組織を裏切り壊滅に追いやり、その後平和に暮らしていた主人公。
しかし、残党があらためて勢力を拡大。主人公家族は命を狙われることに。証人保護プログラムを使い別の人生を手に入れるが、所詮余所者で悶着が起きる。しかし、子供達も地元の子と衝突しながらも友情を育んでいくなど徐々に打ち解けていく。
そんな中、子供の1人が持病の発作を起こし、昔の仲間に助けを求める。子供の病態はよくなったが、そのことで犯罪組織に所在が知られてしまう……。」
こんな話、見たことないかい?
手垢!手垢しかないよ!何度も見たよこれ!
新しいとこ何にもない!
家族家族家族、家族のために全くの他人に負担を強いるのは正義!鯨は賢いから仲間!捕鯨する奴は悪魔だから残虐に殺してもok!
キリスト教的人間中心主義に疑問を投げかけて新たに掲げるのが、ポリコレ的教条主義という、「カルトから抜けて別のカルトにハマる」現象なの笑えない。
多様性による調和を掲げてるつもりで、やってることが自分の正義に従わない相手を駆逐するという、ネオ十字軍。
正義を指し示す絶対者が、神から意識高い系イデオロギーに変わっただけ。
捕鯨銛に入ってるメーカーロゴが「日浦」だかの漢字で、あーはいはい。
ダメダメすぎて、いくつもある設定不備(こんな状況下で線路引いて、個人形態武器の輸送なんてするわけないだろ、とか)はどうでもいい。
個人的には、大佐の記憶を持つナヴィとして新たに生まれた存在の苦悩、遠洋漁業のように長く帰れない出稼ぎに来た捕鯨業者の日常を描いた方が深みのある話になったと思うし、それを作るというならぜひ見たい。
謎が残ったままの続編ありきな感じだが、それはどうでもいいや。どうせお気持ちメロドラマになるのが目に見えてる。
というわけで星2。本筋とは外れたところにある「よかったところ」がなければ星1.5、映像に金かけてるだけの駄作。
おまけ。
字幕の「2分で出発だ」は誤訳じゃないですかね。two minutes は、「すぐに」とか「あとちょっと」を意味するスラングなので。