「映画は元々アトラクション」アバター ウェイ・オブ・ウォーター シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
映画は元々アトラクション
普段は劇場にそこまで拘らない(いまだにIMAXシアターにも行ったことが無い)が、本作は映像に特化した作品だったので、普段ならシニア料金1200円が色々と追加料金を加えられ2100円払ってドルビーシステム(ハイ・フレーム・レート、3D)で梅田ブルク7にて鑑賞。
内容についてはそれほど期待をしていた訳ではなかったが、結果的には上映時間192分が長くは感じないほど(映像に)見入ってしまっていた。
しかし、眼鏡の上に3Dメガネで3時間以上は流石に辛かった。
誰かがMCU映画は「テーマパークのアトラクション」と言ったそうだけど、本作こそアトラクションに徹して現在の最先端技術の粋(すい)を尽くした映像を見せるために作られた作品と言っても過言ではないでしょう。それに映画って元々は「テーマパークのアトラクション」から始まっていますから、それを否定しても意味がない。
それをエンタメ映画王国であるアメリカが威信と誇りをかけた作品とも思えるほどに映像は素晴らしかったです。
噂では製作費に540億円かけているという話ですが、それが回収出来るかどうかは別にして、こういう作品を最初に作ろうとするのはやはりアメリカでしょうし、それだけ映画に対しての意地を強く持っているという国だという事を、世界中の映画ファンも恐らく感じていると思います。
一応映画ファンと名乗っている以上、そういう映画を見逃すことは出来ませんし、個人的に映像フェチでもあり元々が好奇心の塊の様な気質なので今回はちょっとはり込みました(笑)
映画って上記した様に元々はアトラクションというか“見世物”から始まり進化したものだと思っています。
最初は動く写真の記録から小説や演劇的要素が加わりフィクションが作られ洗練され、更に技術的に音や色がつきフィルムからデジタルに移行してCGという表現手段まで取り込み多様化が進むという、他の芸術と比べ進化の速さと多様性が比較できないほどの広がりを見せています。
なので、同じ「映画を観る」という行為についても、種類によって鑑賞目的が異なるのは当然です。
しかし、映画の一般レビューなどを読んでいると、それがあまり見えてこないのです。
例えばこんなビッグバジェットの作品に対しては、作り手は普段映画を観ない層の“見世物”的好奇心をくすぐり劇場に呼び込みペイするしかないのであって、本来そのような作品だという予想の下に鑑賞しているのだろうと思っていても、レビューで今更「内容が無い」なんて書く人達も必ずいて、そういう人達はそんな予想も立てずに鑑賞しているのだろうか?と、つい考えてしまいます。
“見世物映画”として見たら、今まで見たこともない驚くほどの映像力にとりあえずは圧倒されるだろうに…、更にはその映像力を発揮する条件を満たした劇場で観る以外に本作の真価ははかれないと予想しないのだろうか?
世の中には年に何百本観る映画マニアが多くいますが、日本人の平均鑑賞本数は年に数本って事になっていて、映画を観ている人と見ていない人との映画に対する意識の差が大き過ぎ、その差をどのように受け止めるべきか困惑するのですが、本来は映画会社や劇場が観客に対しこの映画の何処に価値があるのかを上手に誘導するべきだし、その条件に適う劇場で鑑賞させるべきなのに、それが出来ていないから観客も育たないし的外れな感想が増えるのでしょうね。
一映画ファンとして、これだけ多様性のある映画界に対する意識の低さというのか、了見の狭い映画の見方しか出来ない映画ファンの多さに落胆も感じます。
正直、半世紀前の人達は、映画でこんな映像を観られることは絶対に誰も想像も出来なかったと思います。
で本来、大半の人はそれを見たくて劇場に行っている訳で、普通の感覚ならそれだけで驚き大満足するはずであり、内容だけを求める人ならまずこの種類の映画は選ばないでしょうからね。