「サフィンという優しすぎるヴィラン」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ 高之さんの映画レビュー(感想・評価)
サフィンという優しすぎるヴィラン
オープニングのシークエンスはマドレーヌにとってはもちろん悲劇だが、サフィンにとっては「少女に慈悲を示すことで復讐心が洗われる」という完全に『主人公的なエピソード』である。
観客である我々は「善のボンドと悪のサフィン」は自明としてあり、演出ももちろんそこに沿うよう展開するが、冷静に考え「世界情勢を良い方向に動かした」のは明らかにサフィンのほうであり、結果的に何度も世界を混乱に落としている作中のMI6は申し訳ないが平和への貢献度として遥かに劣る(笑)
サフィン自身も明らかに「善意に基づいて行動して」おり、そこは自身の正義を信念に行動するボンドとなんら変わらない。
あらゆる意味でサフィンとボンドは双生児なのである。
両者とも「力を持ちすぎた善はすでに世界の脅威でしかない」存在である。
ならばボンドのラストはもっと自殺に近い要素を入れても良かったと思う。あれでは手詰まりの末の無念のゲームオーバーと見えなくもない。
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