「面白さは歴代作品に引けを取らない」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
面白さは歴代作品に引けを取らない
本作品には全編を通じてどこか物悲しい雰囲気が漂っている。監督が違うからなのか、ダニエル・クレイグの持つ雰囲気なのか、よくわからない。ショーン・コネリーやロジャー・ムーアのすっとぼけた女好きの中年男が、格好をつけながらも、その一方でスパイとしての凄腕を発揮するというお気軽なストーリーで、いつもハッピーエンドが待っていた。
しかし本作品のジェームズ・ボンドは、気障なシーンも気取って女を口説くシーンもなく、悲壮感さえ感じさせる。唯一、以前のボンドのようだったのが、アナ・デ・アルマスとのシーンだ。ダニエル・クレイグの前作「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」で共演した美女である。ジェームズはアクションシーンをスマートにこなし、とても楽しそうだった。ダニエル・クレイグがアナ・デ・アルマスを大好きなのは間違いないと思う。しかし当方は芸能記者ではないのでそれ以上は追及しない。
ストーリーは多少強引なところもあるが、よく考えれば一本道である。次がどうなるのかが割とわかりやすくて、我ながらのめり込んで鑑賞した。ラストになって、あれ、もう終わり?と思ったほどだ。まったく長さを感じなかった。なんだかんだいっても007である。面白さは歴代作品に引けを取らない。それに本作品は物悲しさという点で異色である。オンリーワンのジェームズ・ボンドが完成したと思う。ダニエル・クレイグは見事だった。