「史上初めてまともに終わった007?」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
史上初めてまともに終わった007?
歴代のボンドは作品が不発で降板、数年後リブートの流れが続いていて、今回のダニエルグレイグも前ボンドのピアースブロスナンのリブートで始まったものの、流石にそろそろダニエルグレイグがボンド降板と散々言われていた。
今回、たまたまお台場にいてタイミングが良かったのでスクリーンXで鑑賞。
いつものMGMのライオンから始まり今作はユニバーサルのロゴ。
あの地球がそのままボンドのいつもの銃口の円に繋がる演出は素晴らしい。
思えばMGMも不遇で、昔はワーナーだったりその後20世紀FOXと組んだり転々としている。
オープニングの街並みとスクリーンXとの相性は抜群で、3Dよりも没入感が深く、フレームの外側の出来事も覗くとなかなか楽しい。
今作はカジノロワイヤルから始まる一連のグレイグボンドの点と点を紡いで行って、作品の作りとしてはスカイフォールに近い雰囲気で進む。
ただ、悪役が弱く、呆気なくスペクターが壊滅されて、プロフェルドもハンニバルのような立ち振る舞いをするのかと思いきや呆気なく退場。
ところがふと思った。
今作の悪役はここで一連の復讐は終えているのでは?そこから先はただのオーバーキルでは?
そこでやめときゃ良かったのにお互いが余計な事を続けてしまい、さながらレザボア・ドッグスの様に共倒れをする。
死ななくて良い人が沢山居るのでは…
そう思い気になりだすと一気に白けてしまい、後半は助長な気がしてしまい、中盤までの緊張感、並びに悪役の小物感で残念な事が続いてしまい、そのまま降り注ぐ炎で全てが昇華されてしまう。
最後の階段を上がりながらの一連のアクションは、レイドを思い出しなかなか興奮してここで一瞬持ち直したものの、その後は失速。
最後は秘密組織ならではのあっさりとした余韻と、母娘の表情でゆっくりと幕を閉じる。
うーん。
うーん。
綺麗に終わった気はするものの、新007の存在が弱い。
他の人も指摘しているが、僕はこの007が敵側の右腕だったなどのスパイスが欲しかった。
今作の最大の敵とも言えるナノマシンももう一捻り欲しかったし、かつての盟友との別れのシーンももっとエモーショナルに描いてほしかった。
唯一光るのはキューバの現地スタッフの活躍で、このシーンが良かっただけにこれ以後の失速が痛すぎる。
小学生の頃から007映画を観続け、やがて僕自身がボンドの歳を超えそうな時期になり、改めて007という映画の存在の大きさを再認識した、という意味での星5つ。
最後ちゃんと終わったのは初めてじゃないだろうか?
ダニエルグレイグがボンドに就任していた時にメディアで喜んでいた映画評論家のおすぎさんは今作をどう評価するのか興味深い。
p.s. トムクルーズだったら最後は生き残ってそう。