「CGのウサギの毛並みは、そりゃもう絶品な仕上がりなんですが……。」ピーターラビット お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
CGのウサギの毛並みは、そりゃもう絶品な仕上がりなんですが……。
論理がメタメタに破綻していても、外見がモフモフして可愛いというだけで、コロッと騙される人が多いのかも知れません。
あるいはウサギを飼っている人なら、この映画に、また違った感想を抱くのかも知れません。
しかしウサギに思い入れのない私にとって、この映画は、悪辣な知能を有するウサギが、ただただ人を襲い続けるというだけの、単調な、つまらない、くだらない、あきあきする、同じことの繰り返しを2時間も見せ続けられるだけの映画に過ぎませんでした。
何度も出てくる不快なセリフ。
「ここは元は動物の土地で、人間があとからやってきたのだから」うんたら、というものがあります。
こんなセリフでコロリと騙される観客もいるのでしょうね。
しかしそこで動物たちが狙うのは、人間が来る前に彼らが食べていた木の根や草ではありません。
ニンジンにしても各種果物にしても、人間が持ち込み、人間が丹精込めて育てたごちそうですよ。
ウサギが食べていた木の根や草なら、今でも周辺の広大な土地に大量に自生しています。
しかしウサギたちは、もともと自分たちの先祖が食べていた食料には興味がなく、人間がわずかな土地を囲ってその中で育てているものを、あたかも自分のものだと主張しているのです。
人間が持ち込み、人間が丹精込めて作った作物を、「奪い、盗む権利」があるとでも言うように。
そして、作物を守ろうと頑張る人間が悪だとでも言うように。
ですが良く考えてもらいたい。
そもそもこの土地に住んでいたのは、盗みを働いている動物本人ではありません。
そこを追われた動物ってのは、何十世代も前の先祖に過ぎないのです。
しかも彼らのご先祖様だって、作物なんか育てたことはありません。
そんな何十世代もあとのケダモノに、他人が丹精込めて作った努力の結晶を盗む「当然の権利」があるのでしょうか。
エセ・ヒューマニストの、二枚舌の匂いがしませんか。
考えて欲しいのです。
映画の主人公トーマス・マグレガーが勤めていたロンドン都心の百貨店「ハロッズ」に、ケルト人の子孫が現れて、そこに並んでいる商品を自由勝手に持ち去っても、「ここはもともとケルト人の土地なのだから、ケルト人にはここに並べた品物を無制限に持ち去る権利がある」と言うのでしょうか。
ケルト人には、子孫代々に至るまで、ロンドンで自由に盗みを働く権利を認めるのでしょうか。
ウサギはモフモフしていて可愛いから許すけど、ケルト人なんて会ったことがないから許さない……ということでしょうか。
二枚舌の匂い。
それも、極め付きの二枚舌です。
あるいは、アメリカインディアンの子孫に対しては、マンハッタンで自由に強盗を行う権利を認めるのでしょうか。
もしくは、隣の国で「1000年間も謝罪せよ」と言う連中に対して、あなたは謝罪し続けるのですか。
違法に核兵器を作った「人間豚」の言うがままに、何十兆円もの金を払うべきだと思うのですか。
……という話なんですよ。
論理が破綻していても、外見がモフモフしていて可愛いというだけで、多くの人がコロッと騙されてしまう。
そんな貴重な事例の教材として考えるべきなのかも知れませんが……。