「手に入れられない平穏な日常」悪女 AKUJO sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
手に入れられない平穏な日常
冒頭のワンカットのアクションシーンが凄まじい。
何者かの視点で人相の悪い男たちが次々と倒されていく様が映し出され、徐ろに画面はその何者かの姿を俯瞰したカットに切り替わる。
たった一人で敵のアジトに乗り込み、組織を壊滅状態にした殺し屋の女スクヒ。
しかし彼女は雨の降る中、駆けつけた警察により拘束されてしまう。
そして彼女は国家が秘密裏に運営する暗殺者の養成施設へ送られ、国家直属の暗殺者へと育てられていく。
話が進むうちに彼女は父親を殺され、まだ幼い頃から犯罪組織に育てられたことが分かってくる。
はじめから彼女には平穏に生きる道など用意されていなかったのかもしれない。
成長した彼女は自分を拾ったマフィアのボス・ジュンサンに恋をし結婚するが、彼は敵対する組織に殺されてしまう。
その敵討ちのためにアジトに乗り込んだのが冒頭のシーンだった。
スクヒは施設内でジュンサンとの間に出来た子供を育てる。
そして束の間自由の身を与えられるが、常に彼女は組織に見張られており、任務から逃げ出すことは出来ない。
中盤同じ組織に属するヒョンスが彼女に接近し、二人が恋仲に発展していく甘い展開もあるが、その束の間の平穏もいずれは奪われることになってしまう。
神は人に与えるが無慈悲に奪いもする。
スクヒには生きている限り、奪われ続ける人生しか残されていなかったのか。
どの時点まで戻れば彼女は平穏な生き方を選ぶことが出来たのだろうか。
おそらくジュンサンの復讐のためにアジトに乗り込まなければ彼女には違った未来が待っていただろう。
結果的に彼女が愛した男は、後にもっとも憎い男になってしまう。
アクションシーンは本当にどうやって撮っているのかと感心させられたが、色々と無理な展開もありストーリーにはあまり入り込めなかった。