「アクションシーンを再度進化させる新鋭登場」悪女 AKUJO 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
アクションシーンを再度進化させる新鋭登場
チョン・ビョンギル監督作品は初見。
公開時にこの作品の冒頭シーンが素晴らしいって話は聞いていたものの観る機会と作品名を記憶するのを逃し、たまたま配信タイトルを見ている中でこの作品だと気づき観てみた。
ストーリーや構成が悪いとは思わないものの、それよりもアクションシーンやそのアクションシーンを魅せるカメラワークの素晴らしさが特出していて印象に残った。
元々チョン・ビョンギル監督がスタントマン出身ってこともあり、作品の予算をアクションの魅せ方に全振りして撮っているんじゃないかってくらい様々なアクション、様々なアクションの魅せ方に終始していて、配信で観ていてもまるでジェットコースターのような、4DX環境が映える映画体験になってたと思う。
監督の魅せ方も素晴らしかったものの、主演のキム・オクビンさんがテコンドー&ハプキドーの黒帯で自らトレーニングを積んで、役者自身がほぼノースタントでアクションシーンに臨んだからこそ、この作品を象徴するワンカット長回しアクションシーンが実現したんじゃないかってくらい説得力が出てたと思う。
また、この作品の独自性としてはカメラワークもあると思った。冒頭の一人称アクションはジョン・ウィックなどの凄腕の暗殺者が、ただ華麗に迫る敵を薙ぎ倒してる訳じゃなく、日々研鑽をしていった上で五感全てをフルに使っているような感覚を凡人でも味わえる良い魅せ方だったし、三人称になってからのアクションシーンでは殺陣を距離を置いて撮るんじゃなく役者と同じくカメラマンも殺陣の一部になって役者にかなり寄ることで、よりバイオレンスに、より生死が身近に感じられるダイナミックな映像になってたと思う。
更に、ただ主役に寄って撮るわけじゃなく上下左右色んな方向からやってくる殺気をはらんだ追手の攻撃に対する主人公のリアクションを流れで見せていく、早いけれど見辛くはないカメラワークが、過去の作品やボーンシリーズ、ジョンウィックシリーズなどのアクションシーンに対するカメラワークを経た系譜にも感じられる。
撮影までにそのイメージを絵コンテとCGでのプリビズがあったみたいだけど、本編を観た上でもカメラマンがどうやってこの位置からこのタイミングで撮影出来たのか、まるで魔法を見たような気分になった。
この作品公開の近々で『ブラックパンサー』や『レディ・プレイヤー1』が公開していたけれど、この作品も劇場で観れば良かったと今さらながら後悔。