「☆☆☆★★★ ジャンルは違うのだが。その当時は、単なる地味な中堅レ...」負け犬の美学 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★★ ジャンルは違うのだが。その当時は、単なる地味な中堅レ...
☆☆☆★★★
ジャンルは違うのだが。その当時は、単なる地味な中堅レスラーだった男がマイクを手に取って叫んだ!
「藤波!俺はお前のかませ犬じゃないぞ!」
それが、どれ程リスキーな事なのかを当然の如く知りながら。
《負け犬が狼に牙を剥いた瞬間だった》
この映画の原題は【スパーリング】
チャンピオンの練習相手…とゆうのは聞こえは良いが、要はサンドバックの役目に近い。
尤も、ある程度の力量が無ければ務まらない。
大体は、優秀な若手ボクサーが指名されるケースが多く。過去には、逆にチャンピオンのスパーリングパートナーで有りながら。チャンピオンを圧倒するボクサーも居たと聞く。
主人公の戦績は48戦 13勝3引分32敗と、かなりショボイ。
おっと!また負けたから33敗だ。次が50戦目。
家族を養う為なら必死だ!彼を突き動かしているモノ。それは、娘が《持ってる》事を信じる気持ちに他ならない。
生活の為。娘の為に、何とか辿り着いたスパーリングパートナーの仕事。
だが現実は残酷だ!「ポンコツ!」と言われ、一刀両断に職を失いかける。
だが、それでも。負け犬には負け犬の考えが有った。
彼には【経験】とゆう大きな…いや、現実を直視すると細〜いスキルが、ほんの少〜しばかり残っていた。
人生に於いて、勝ち組に居る人等はほんの一握りだ。大半が負け組ゆえに、「俺だっていつか必ず!」と思っている。
だけど、殆どの人にはチャンスは巡っては来ない。その前に諦めてしまうか、《その時》に動く事が出来ない人が、殆どかも知れない。
長州力の叫びは、そんな負け組の人達の心を鷲掴みにし熱狂させた。
本人の努力も大きく。その後の藤波との闘いは、【名勝負数え歌】とも言われる。
悲しいかな、負け犬の彼には。当時の長州の様な若さも、ギラついた野心も持ち合わせはいなかった。
ただ「ボクシングが好きだ!」とゆう思いと、「家族の為に…」の気持ちだけ。
映画は、そんな彼の姿をただ淡々と描いていて。そんな演出に不満を唱える人もいるだろうと思える。
最後の試合等は、幾らでも盛り上げられるのに…と。
おそらく監督が本当に描きたかった…と言えるのは。映画が終わった後に出て来る映像同様に。娘の笑顔に頷く彼の笑顔も、本当の勝者に値する…との思いだったのだろう。
そこには、この主人公同様に。素晴らしいボクシング馬鹿による最高の馬鹿な男の美学が輝いていた。
【敗者がいるからチャンピオンは生まれる】
全くもう〜!泣かせるんじゃねえよ!
この馬鹿野郎(ノ_<)
2018年12月11日 キネマ旬報シアター/スクリーン3