劇場公開日 2018年9月15日

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「全て自分に返ってくる」飢えたライオン KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0全て自分に返ってくる

2018年9月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

先生も友達も家族も彼氏も先輩も誰も助けなかったのに、死んだ途端にありきたりな演説垂らされてもね。
校長先生、竹中直人みたいな話し方するじゃんと思っていたら竹中直人だった。

瞳がどんどん追い詰められていくに連れて心がどんどん重くなっていく。
フラリと吸い込まれるような飛び込みに思わず目眩がしそうになった。
その後の報道合戦やメディアを見た一般人の言動はただただ怒りが湧いてくる。

感じる不快感は全て自分に返ってきて、それでも世も自分も変わることなく、たまに起こるセンセーショナルな事件をいいとこ取りで食い散らかして生きていくんだろうと思ってさらに嫌になる。
人の不幸は蜜の味とばかりに面白がり笑い集る人たちの顔が全部自分に見えた。

まあ誇張もあるし、マスをただ批判していればいいとも思わないけど。
本作は多方面への批判の意思が強く現れていると思ったけど、テンポ良くしっかり見せてくれるので面白かった。
自分も他人も色々受け入れて、これから何か感じ方だけでも変わればいいな。

一人がスマホのカメラ向けると何も言わずとも自然にみんな寄って入ってくるのがリアルで好き。
シーンごとの定点カメラのぶつ切りと切り貼りでほぼ構成されていて、ちょっとしつこいなと思ったけど段々癖になってくる。
日常感が強く、瞳の生活を覗き見しているような作品の中に投げ込まれたような感覚になった。

先生の逮捕を受けて教室中が色めき立つ中ずっと机に伏せてる人がいたり、仲良しグループでもチクリと刺すものがあったり、家の中の散らかり具合、一つ一つの会話のテンションなど徹底的にリアリティを追求しているのが伝わってきた。

救いも何も無いけど、机の落書きを消す場面での友達の反応の速さはグッと来て好き。

KinA