「VIVA」愛と法 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
VIVA
この作品を鑑賞するまで、私はフミとカズという弁護士がいる事を知りませんでした。そしてフミとカズという弁護士を知らないばかりか、社会で起きている裁判がどういう理由で、何の目的で行われているかを詳しく知りませんでした。恐らくこの作品を鑑賞しなければ、考えもしなかったことです。そして作品で取り上げられたいくつかの裁判に対して、私自身にいくつかの知りたい事が出てきました。
・どうして戸籍を持てない人がいるのだろうか?
・どうしてろくでなし子さんは、わいせつ物陳列罪の疑いで逮捕され、裁判をしているのだろうか?
・どうして君が代斉唱の時に起立しない先生がいるのだろうか?そしてその先生は、何故減給処分とされたのだろうか?
私の知りたい事は劇中で丁寧に丁寧に説明されることになります。
明治民法を受け継いだままの民法772条により、無戸籍のままの人がいること。日常の生活をしているだけでも電車やコンビニにわいせつ物がある気がするけど、ろくでなし子さんのアートは駄目なのか?ろくでなし子さんの言う通り、女性器に対して社会がわいせつなモノとレッテルを貼っているけど、わいせつな目で見ているのは誰なんだ?憲法で思想、良心の自由が保障されているのだから、国歌って歌わなくても良いんじゃないかな?
そして私は何度も繰り返し繰り返し行われる丁寧な説明がいわゆる「裁判」であり「法律」である事に気づかされたのです。カズの母親であるヤエさんが、「だって知らないもの。誰も教えてくれないもの。」と息子が同性愛と知った時の話をしていましたが、世の中知らない事だらけです。知らない事を知る事は人との違いを知るいいきっかけになります。他者との違いを知るひとつのツールが法であって、他者との違いを理解することが愛なのですね。
「どうして日本では、少し違うだけでここまで追い込まれるのか?」戸田監督は海外の上映祭でいつも聞かれることをパンフレットに記していました。他者との違いを知り、その違いを分かち合えた時に日本は「少し違うだけで追い込まれる社会」と海外から言われなくなるのではないでしょうか。それは、私達日本人にとっても、凄く幸せなことではないでしょうか。
カズ、フミ、カズマ、ヤエさん、ろくでなし子さん、ろくでなし子さんのお父さん、その他の出演した方々。そしてこんなに愛に溢れる不揃いな個性派人間を全く飽きさせもせず問題提議しながら作品にしてくれた監督。素晴らしい作品を今のこの日本で鑑賞できた事に心から感謝すると同時に、皆様の熱い愛情を広く世の中に伝えたくなりました。VIVA!