荒野にてのレビュー・感想・評価
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馬以外ではダメ男描写が光る
現代アメリカインディペンデント映画らしい映画。 なので平均的に描写か巧み。特にクズ男まわりが非常にいい。そのリアリティ。クズ男と寒々としたアメリカの景色と馬。 馬のあのシーンだけはまじビビった。
爽やかな感動を覚える
アメリカの田舎は日本の田舎よりもずっと田舎である。自動車がないと不便なところは同じだが、田舎でもバスが走っている日本と違って、広大な土地のアメリカでは自動車がないと本当にどこにも行けない。西部劇では馬を駆って走っている。かつては馬車も大活躍したが、今では自動車だ。 馬に乗っていた名残は競馬の形で残っていて、趣味としての乗馬も盛んである。競馬も大人気だ。現代の日本の競馬の主流血統であるヘイルトゥリーズン系のサンデーサイレンスは、アメリカの三冠レースであるケンタッキーダービーの勝ち馬である。 アメリカにはサラブレッドが走る競馬だけではなく、一回り小柄なクォーターホースによる短距離レースもある。本作品の原題になっている「Lean on Pete」はクォーターホースの競走馬で、父親と二人暮らしの素直な少年と関わることになる。 本作品の舞台はポートランド。時代はというと、スマホを持っているのがお金持ち風の人たちだったことから、普及率の変遷を考えると舞台はおそらく2010年ころだ。いろいろあって父親と二人暮らしをしている16歳の主人公チャーリーは、馬の世話をして賃金を得るようになったが、ある事情が発生したため、馬を連れて旅に出る。 行き先はワイオミングの伯母さんのところだ。かなり前の記憶だけが頼りである。ポートランドからララミーまでは1800km以上ある。日本で言えば鹿児島から札幌までくらいだ。16歳の少年とクォーターホースにとっては果てしない道のりである。行き着いたとしても伯母さんに会えるかどうかはわからない。半端ではない勇気で少年は邁進する。16年という少ない人生経験ながら、善でも悪でも持てる力のすべてを発揮して、少年はピートとともに前に進む。 映画は必ずしも主人公の味方ではない。つまりリアリズムである。人間は食うに困れば何でもする。それを咎める者もいれば許す者もいる。長い旅の中で、少年は極限状況を次々に経験しながら、急速に大人になっていく。しかし魂のエクササイズはそれに追いつかない。なんとかなるという空元気と心細い本音、人を信じる気持ちと信じられない気持ちの間で揺れながら、少年は前に前にと進んでいく。それしか彼の生きる道はないからだ。 少年が主人公ではあるが、少年の旅に寄り添っているうちに、自分の半生を追体験したような気になる。少年の旅は少年だけでなく、世の人の人生そのものだったのだ。ラストシーンでは少年の魂がようやく落ち着いて、不安と恐怖と、それに悪い心を洗い流すようだ。素晴らしいシーンである。人生を力強く肯定する世界観に爽やかな感動を覚えた。
厳しくも優しい感動作
クライマックスの思わぬ感動でこの作品の意味を知った。 15歳のチャーリーは、物心がつく前に母親が家出したようで、父親との二人暮らし。父親の稼ぎが少なく生活は困窮していたが、競走馬リーン・オン・ピートの世話をする仕事を得た。 間もなく父親が不倫相手の夫に殺され、そして老いて勝てなくなったピートの殺処分が決まり、幼い頃母のように慕っていた叔母を探すため、ピートを連れ出し荒野へと踏み出した。 アメリカ北西部の大自然は美しくも過酷極まりなく、タイトロープの上で風に吹かれるが如き緊張感。死を想起した。 そしてクライマックスが……ホントいいです。チャーリーと一緒に泣きました。厳しくも優しく、映像美も特筆すべき感動作だ。
面白かった
アメリカの田舎しか出てこないので時代設定がよく分からなかったが、会話の感じから12〜13年前位なのかなと思った。 少年が最初からずーっと独りぼっちで、唯一のコミュニケーションが馬とだなんて辛すぎる。毒親問題を根っこにした、16才の地獄めぐりの話だった。最後に降って湧いたような安息の瞬間が訪れるが、ハッピーエンドには程遠く、やっとの事で自分が居ても許される場所に辿り着いただけ、という。
居場所のない少年。 病院、警察、そして馬の仕事を教えてくれた師、様...
居場所のない少年。 病院、警察、そして馬の仕事を教えてくれた師、様々な大人が差し伸べる手をも振り切る。 その手は振り切るためにあるのか?と思うほどの勢いで。 荒野の中のファンタジーな世界に脇目も振らず、果てしない荒野を突き進む少年の顔は、たくましく一種の気迫を感じる。 少年の求める安らぎは決して欲張りでない。 住宅街の窓からもれるあたたかな食卓の灯りや、記憶の奥に潜む美味しい香り。そんなささやかであたりまえで、心を潤してくれるもの。 心を開くとき、やっと本当の少年の顔が見えてくる。
評価が難しい
見終わった直後の感想としては、最後良かったね、と思ったけど、冷静に考えてみると主人公の行動が15歳とはいえ、幼すぎるかなあ?と感じた。 生きていくためとはいえ、犯罪起こしすぎてるし。 ただ、とても心が優しい子だとは思うから、別の環境で育ったとしたらすごくいい子になってたかもしれないなあとも思う。 辛いことをたくさん経験したぶん、それを糧に素晴らしい人生を送ってくれるんじゃないかな、と思えたのが救い。
居場所がない
居場所がない。 15歳にして完全に行き場所を失ってしまった少年チャーリーは、売られる運命の競走馬ピートと、唯一の希望、伯母のところへ向かう。 ...と書くと「母をたずねて三千里」みたいだが、まああれも相当過酷だが、主人公の孤独が想像を絶している。彼は大人が手を差し伸べようとするたびに逃げる。何が彼をそうさせてしまうのか...誰にも頼れない少年が、唯一頼れる(もはや依存とも言える)のはもの言わぬ馬のピートであるあたりが特に悲しい。チャーリーがピートに「乗らない」のは、おそらく支配したいのでなく、寄りそって、寄りかかっていたいから。原題の通り、”lean on”したいからなのだろう。 彼の本音は「つらい、寂しい、助けて」なのだけれど、周りにそれを見せられない状態で育ってきてしまった悲しみ。頼れる者を持たなかった少年の孤独がひたすらに沁みる。 しかし彼は究極的に優しい。馬にも人にも非情になりきれない。だからこそ余計に苦しめられる。 寄りかかれる存在を喪ってなお、ようやく辿り着くラストに彼の平穏を祈らずにはいられない。 「ゲティ家の身代金」にも出ていたチャーリー・プラマー、さすがマルチェロ・マストロヤンニ賞ともいえる演技。想像を絶する孤独の過程を全身で表現していた。そして声だけでそれと分かるスティーヴ・ブシェミの安心感たるや...。大人の論理を見せつけつつも案じるその感じがよかった。
おばちゃん涙が止まらず!
学校にも行かず、父ちゃんが彼女連れ込むから家にも居場所がなく、 馬のピートには心が通い合わせたと思ったら、、、 もう、チャーリーが見ていて切なくて切なくて。まだ子供なのに孤独。まだ子供だからひたすらにひたむきで。 チャーリー、素晴らしかった!
1:1.85(アメリカンビスタサイズ)
タイトルは馬の名前 Lean on Pete ピートに頼るって意味? ウィリー・ブローティンの同名小説が原作 伯母を訪ねて三千里 馬が死ぬ ロケはオレゴン州各地 物語はポートランド(オレゴン)、ポートランド・メドウズ競馬場(もうすぐなくなるらしい)からボイシ、アイダホ、ワイオミン州ララミー アメリカ北西部 車が移動する場面や川の場面はポートランド東南東にあるフッド山近辺の山岳部で、そしてさらに3週間かけてオレゴン州バーンズの小さな集落で砂漠の場面を撮影 チャーリーの最初と最後は別人のよう ブシェミが普通の人に チャーリーの親父役の人が良かった イントゥザワイルドを思い出した。若い人に観て欲しい
それでも彼らは生きていく
これはラスト10分号泣してしまった シングルファーザーの家庭で暮らす15歳のチャーリーは、お父さんが夫のいる女性と不倫した果てに、彼女の夫に襲撃され、亡くなってしまう 天涯孤独になってしまったチャーリーは、殺処分が決まった馬のピートと共に旅に出る これは、そんな一人の少年チャーリーと一頭の馬ピートのロードムービーである お父さんを亡くしたチャーリーにとって、頼りになるのは馬のピートだけ その先に何があるのかわからない彼らの目の前には、ただひたすら広くて何もない荒野が広がっている それでも少年は、その先に希望がらあると信じて前に向かって進んでいく この世には、チャーリーのように温かい家庭に暮らすことが夢だという子供たちがいることを改めて思い知らされた作品だった 頼れるのはお互いだけという彼らは、生きていく方法をストリートで身につけ、いつか、温かい家庭で暮らせるんだという希望を持ち続ける 旅に出て、どんどん逞しくなっていくチャーリーを観ながら、生温い家庭で育った子とは違う、大人っぽい雰囲気を感じたけれど、ラスト10分、やはり、少年だったんだと思わせる彼の姿には涙が止まらなかった そんなチャーリーを観ていると、人はどんな環境でも生きていけるんだなと思ったし、前向きに生きる力をもらった映画だった 主役のチャーリーを演じたチャーリー・プラマーの寂しげな表情に、ほんのりリバー・フェニックスを感じて、これからの期待の星だと思った 彼は既に「 ゲティ家の身代金 」で世に出ているけど、新し物好きな人は要チェックの新星です
それもこれも犯罪です
母親はおらず仕事はしているけれど遊び人な父親と二人、父親の仕事の都合でポートランドにやってきた15歳の少年の話。 不良ではないけれど、家庭の都合か学校には行かずプラプラしている主人公が、馬運車のパンク修理を手伝ったことから、草競馬の厩舎でバイトを始めリーンオンピートという競走馬と出会う。 始めて世話して、始めて競馬に触れて、しかも勝つところを立て続けて見て惚れてしまったのはわかる。そこはわかるし何とかしたいと訴えるのもわかるが15歳だよね?あまりにも稚拙だし、自分本位で最早ピートのことすら考えていないというね。 自分本位でもそこから何かを学び成長したなら良いがそんな感じはないし、その後の出来事からも結局何も学んだ様子はなく終了。って甘過ぎませんかね。 展開のさせ方や空気感とかテンポが良いから作中に結構引き込まれたしみられたけれど、あまりにも何もなくがっかりだった。
少年なりの…
父親とのコミュニケーションもなかなか良く、男親子の会話も楽しそうだし可愛がられてるが、今ひとつ何か思いにふけってる表情 チャーリーは"その日暮らしの生活"を好んではない様にも伺える やっぱ学校へ行きスポーツをして、友達を作って、暖かい家でふかふかのベッドで寝て、パンケーキを食べて… そういう子供らしい夢や憧れがあって… 少年がボロボロながらも 殺処分の競走馬と自分を 照らし合わせて荒野に出て 夢や希望に向かって彷徨う旅路は良かったです 衝突の瞬間は思わず「はっ!!」って声が出てしまいました(汗)
馬、全然関係ないし。
馬がかわいそうでした。 あんなにあっさりと。 主人公が16歳ということで、まだ人間形成の途中段階だとしても、これだけはという一本気がないため、共感できないし、応援する気にもならない。 なので、心の動きは弱く、ストーリーが薄く感じました。 邦題が荒野である必要はあったのだろうか。 「荒野」とは、少年の人生を例えたことなのでしょう。
ロスアラミトスへの道は遠く
レースに勝てなくなった競走馬の殺処分が決定したという知らせを受けたチャーリーは、馬と共に唯一の親戚である叔母を探すため荒野へと一歩を踏み出すという作品。 そもそもロスアラミトス競馬場にも出走できない三流クォーターホースに愛情を注いで、一緒に荒野をさ迷うという時点で不可解な設定だし、主人公の気持ちになれる場面も全く無かった。 更にラストは、この手の映画お決まりの結末で感激もなく終演。 私には何故この作品を公開するのかが不可思議に感じる作品でした。
チャーリーのことを応援したくなる映画。
前作の『さざなみ』の監督のことだけある。 人間の心の中を描くのが非常にうまいですね。 前作は熟年夫婦のすれ違いを描いた作品でしたが、今回は15歳の少年の人生を描いた作品。 このチャーリー君の演技が天才的! なんともいえない切ない雰囲気が、母性本能をくすぐるというか…。 見ているだけで、彼を応援したくなるから不思議です。 愛人の夫のに父親を殺され、天涯孤独になってしまった少年は、突然消息を絶ってしまった叔母を訪ねて荒野を旅することに…。 母をたずねて三千里のような、転々とした旅の連続に、終わりはあるのかと不安になります。 唯一の救いは、旅のお供の愛馬ピート。 競走馬として働けなくなって、殺処分されそうになった愛馬を連れて、叔母に会いに広い荒野をひたすら歩きます。 それにしても、不幸な少年。 次から次に巻き起こる難題に、なんでこんなに不幸なんだと思ってしまいます。 素直な人ほど悪魔につけ込まれてしまうのでしょうか? 少年の純朴さにつけ込んで、神様が意地悪しているとしか思えない。 少年を愛おしむあまり、最後は絶対救われて欲しいと願わずに入られませんでした。 だからこそ、ラストに待っていた展開には感動しまくり! チァーリーの愛らしい姿と、その優しい性格に涙が出そうになりました。 だだっ広い荒野で1人取り残される孤独を体験したからこそ、叔母の愛情により一層安らぎを感じられたことでしょう。 最愛の父最愛の友を一瞬にして亡くした少年は、この荒野での経験を通して、一歩大人になったではないでしょうか? 最後に… 主人公のチャーリーという役名が、実際の彼の本名と同じだったことにびっくり! あの素晴らしい演技は、本名だったからこそ、成し得られたのかもしれません。
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