「これほど重要なタイトルがあっただろうか」スリー・ビルボード ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
これほど重要なタイトルがあっただろうか
微妙なラストである。ラストを見るまでは、もしかしたらこの映画はクライムサスペンス映画史上の傑作の一つになるのではないかと予感したくらいだ。特に自殺した署長が2人に宛てた手紙は感動的だった。その手紙のおかげで、署長は良い人だったこと(広告料を払っていた点を含む)がわかる、また、警察をクビになったディクソンのその後の生き方が、この映画のその後の流れを変えるポイントとなって、演出的にも面白い。
俳優陣の名演技もさることながら、予想を遥かに超えた想定外の展開が素晴らしい。それが結局あの消化不良のラストになってしまった。普段は想定外のラスト(どんでん返しといっても)が大好きな私であるが、この映画に限っては好きになれなかった。
犯人と断定するのを避けたいのであれば、せめてあの男の皮膚の一部を鑑識に出して、その結果を待つディクソン元警官と主人公(被害者の母親)の会話のシーンで終わるとか。主人公がディクソンへ「あの男が犯人じゃなくても、あなたには感謝しているわ」で終わるとか。
もしかしたらあの男は他の女性へのレイプ自体もやってない可能性があるので、想像だけで犯人とみなして殺してはいけないだろう。さすがに映画の中では、アイダホ(あの男がいると考えられる所)に行く途中で予定を変更する可能性を示唆している点は良かったが。
しかもあのラストは殺しに行くと言うよりもピクニックに行くような感じだ。主人公が自分が警察署に火をつけたと告白した時、ディクソンが他に誰が考えられると言ったら、この映画で初めて主人公が笑った。しかもバックに流れるのは、爽やかなカントリーミュージックだった。いずれにしてもそれまでの流れとはかなりの違和感ありありのラストだった。それとも、あのカントリーミュージックの心地よさは、二人の怒りが既になくなっている証なのか、つまり奴を殺しには行かないということか?
<気になった点>
・焼死したのに犯人のDNAは残るのか。
・主人公が警察署を燃やすのはやり過ぎだ。これまで共感できていた主人公だったが、この辺から共感できなくなってしまった。また、娘に車をかさなかったことが間接的な原因でレイプされたことがわかった時も、共感できなくなってしまった。
・他の人のレビューで、新署長がDNAは一致しているのに一致していないと嘘をついているのではないかとの感想もあったが、もしそうであれば、ラストで二人が殺しに行く展開が非常に重みが出てくるので面白かったかもしれないが、嘘をついているとは思えなかった。確かに、奴が事件当時いた場所を機密情報なので教えてくれなかったが、それだけで犯人ではないと嘘をついている理由にはならないと思う。
・自殺した署長の手紙を、彼の奥さんが主人公に渡すが、奥さんはその時点でもあの看板が自殺の原因の1つだと思っているのは、主人公が気の毒だ。その手紙を渡す前に、奥さんは既に手紙を読んでしまっていて、「ごめんなさい、手紙を読んでしまったの。あの看板が自殺の原因じゃなかったのね。」と言って謝るようなシーンがあっても良かったのではないか。
<その他>
見終わったあとでキャストを調べたら、歳とってたので気づかなかったが、主人公は「ファーゴ」の主人公だったのですね。
<追記>
ラストは消化不良と言ってしまった手前、じゃあどんな結末になったったらいいのかと突っ込まれそうなので、以下のような続きを考えました。
ようやくアイダホの彼の住んでいる家を突き止め家に入る。そこには娘が所持していたアクセサリーがあり彼が本当の犯人であることが分かる(新署長は嘘ついていたことになる)。
ディクソンが奴に向かって一発撃ち瀕死の状態になる、そこで奴が「俺を殺しても娘は戻らない」と言う、そして主人公がトドメの一発を撃つ。