「賛否両論あって面白い。私は否のほうだ。」スリー・ビルボード 茶色の小瓶さんの映画レビュー(感想・評価)
賛否両論あって面白い。私は否のほうだ。
製作側の都合により、話や人物が動いている気になるときに映画から覚めてしまう。
いつもの映画鑑賞なら、無口な人物や、説明の少ない演出。突飛な行動などは自分なりに観察し、咀嚼し、考察するため、たとえ暴力的でも自分勝手でも、変な人物でもあまり私は反感は抱かないようにしているのだ。
結論からいうと
スリー・ビルボードは3人の描かれ方以外は高水準でよい。
ただ、どうしてもメイン3人の行動原理はNOと言わざるを得ない。
理解に努める様にして鑑賞したが、悲劇の展開に持っていく製作側の都合で動いているようにしか見えなかった。もちろん演技は非常に良い。
気になるが多すぎてしまった。
なぜミルドレッドは警察を目の敵にしているのか。もう少しそうなるための警察の手落ち等の導入をもう少し描いてほしい。筋違い。強引、または強情。復讐鬼なら感情移入できるが、これは違う。日頃の無配慮が巡り巡って敵を作っているタイプだ。擁護できない。
ディクソンもなぜレッドに暴行するのか。短絡的というか。元凶のミルドレッドに暴行するのか筋では?イヤホンしてもビンが割れるのは普通聞こえないか?
署長も家族を残して不誠実。手紙書きすぎ。手紙長すぎ。手紙の届くタイミングが全て悪すぎ。支援金の意図が不明または悪意。敵に塩?捜査の継続を意図するなら自分で部下に指示すればいいだけじゃね?支援金は家族になぜ残さない?
火炎ビンと医者の指と元旦那の罪の報いがないのも引っかかる。
ミズーリ州ではよくあることなのか?
反感を抱くか、もしくは上の流れも違和感等なく、絶賛できるかの紙一重のギリギリな脚本なんだと思う。
なお、個人的にはラストは良くも悪くもなく。あんな感じの終わり方の映画はたくさんある。
以上言いたいことを言ったが、絶賛の声もあり、やはり、見る人によって受け取り方が変わる。作中での行動が空転するように、各自の正義も受け取り方が違う。善悪も一概にいえないというのは実にメタ的といえる。このあたりは実に秀逸。
同じ映画を作っても受け取り方が違う。映画を見て怒る人もいれば、歪つな群像劇をみて愛と赦しを与える観客もいる。(後者になりたかった。)
私は作中の怒りを受け止めてさらに怒ってしまったほうの人間だった。
賛否両論の映画系はこれまで、中立や傍観のスタンスが多かったが、本作は否の立場になれて、ある意味面白い映画体験でした。