劇場公開日 2018年2月1日

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「重く、深く、じわじわと心に染み渡る名作」スリー・ビルボード tさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0重く、深く、じわじわと心に染み渡る名作

tさん
2018年2月14日
PCから投稿

知的

難しい

幸せ

CG全盛で現実とはかけ離れた境遇の主人公が冒険し空想の快感を与えるオナニー映画が作られ続ける一方で、どこにでもあるリアルを用いたほろ苦く哲学的でニヒルで静かな名作が毎年1つぐらいは生まれる。
昨年はこの映画かな。

一昨年は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」。その前は「フレンチアルプスで起きたこと」
こういう映画こそ、本当に怖く、救いのない境遇を私たちに示し、その中での本当の救いとは何なのか?を教えてくれるものだ。

本作。地味そうだったので、退屈しないかどうか心配したが、めちゃめちゃハマった。
能力や見た目に関係なく、世の中を上手く生きる事ができない人はいる。そんな生きる事が苦痛でしかない人に向けた静かな癒しの映画。

登場人物達のどん底っぷりが、日常的にどこにでもありそうなリアルな(差別を受けているわけでもなく、マイノリティでもなく、障害者でもなく、人に言えない特殊能力があるわけでもなく、凄い貧困なわけでもなく、凄い過ちを過去に起こしたわけでもなく、ごく普通の人間の行き場のない)感じで、見入ってしまった。

この映画の中で、最終的に本当に心を通わせてるのは、あの3人だけなんだよね。

特に、ガンを患っていたあの署長とその奥さんの間の、全然心が通じてない感じが凄く嫌だった。怖いっすねマジで。
でもまぁ人生ってそんなもんなのかもしれない。

主人公はそんな鬱屈した境遇を遂に抜け出すことを決意する。ラストは清々しい。

こういう映画の良さがわからない人は、将来本当に救いようのない困難に直面したと思った時に、この映画を観て欲しい。きっとこの映画は、あなたに癒しと勇気を与えてくれるはずだ。

t