「スカイウォーカー家の長い家族の物語を見届けた。愛で終わり良かった。」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
スカイウォーカー家の長い家族の物語を見届けた。愛で終わり良かった。
はぁ、終わってしまった、子供の頃からずっと見てきた9部作。祖父母の頃始まった作品を、私も子持ちで見ることになると思わなかった。テンポ良く進む一方、興奮までは行かなかった。臨場感と言うよりも、見守るような気持ち。
きっとアナキンお爺ちゃんもそんな気持ちだろうな。
堕ちるしかなかったダークサイド。堕ちてまで守りたかった子2人のルークとレイアはまともに育ったのに、まさかの孫ベンが堕ち、でもベンがまさかの因縁のパルパティーンの孫レイと同世代?!さぞ心配した事だろう。
というか、パルパティーンとアナキンはかなり年齢差あったのに、孫同士同世代でむしろカイロレンの方がレイより年上な感じすらするし、パルパティーンはシディアスになる前は地位も顔も結構良かった割に、相当晩婚だったのかな?それとも、子供が、親がシディアスってかなり結婚に不利で晩婚だったとか、子を持つかしばらく躊躇ってたとか?色々邪推してしまう。
結局、カイロレンは悪を極める事も出来ず、ただただレイに翻弄され、反抗期数年をダークサイドで過ごしその間父親ハンソロまで殺害し、反抗期明けに霊体ハンソロと話してあっさり良い子に戻っただけな印象。とても生ぬるく見えるのに、内面の、寂しさ、自立の方向性に迷う葛藤、どんな手段を用いてでもという狡猾さを持てない優しさ、色々垣間見えてヘタレなのにとても魅力的。
復活してもなお、相変わらず手から雷を出してばっかりのパルパティーン。執念深すぎて、カイロレンや孫のレイをトップに据えるだなんだ言っても結局、自分が蘇りたいだけ。レイは拒むの当然にしても、アナキンの時とは全く違って、カイロレンもパルパティーンそのものには全く惹かれていないし、誘惑どころか、単なる老害パルパティーンの私欲へのお付き合いでしかない。
そして、孫に会えてはしゃいじゃったのか、強力なフォースを持ちながらも、欲にまみれてる隙にレイがカイロレンと作戦を交信してる事にすら気がつかない。ただ、レイがフォースでパルパティーンを殺したら、パルパティーンがレイの中に乗り憑るという謎ルールは怖すぎる!
カイロレンと2人で協力して倒すかと思ったら、エネルギー抜かれてすっ飛ばされるカイロレン、、勢い任せに人を殺してきた割に、人生の集大成とも言うべき最も肝心なところであっけない!
一方レイは起き上がって、全宇宙船にビリビリできるくらいの強力なパルパティーンが放つ雷を片手持ちのライトセーバーでも結構受け止められてる!ほんと強者。そしてルークとレイアのライトセーバーを手にしてついにパルパティーンを退治!死人を蘇らせる技術そのものをぶち壊さないといつまでも帝国軍、ファーストオーダーは滅びない気がするけれど。
それにしてもレイアの修行回想シーン、ルークを追い詰めるくらい強かったのに、レイアはいつも実戦でライトセーバーは使わずピストルばっかりだったなぁ。
力尽きたレイに、同じく力果てそうな己の最後の力を振り絞りレイを助けて終わるベン。それがなかったらほんと何もしない人だったけど、最後に大きな功績。
カイロレンを卒業したベンとレイがフォース越しではなく最期に直接思いが通じ合い、成就したのは人間というか若者らしくて良かった。敵でありライバルであり、でもジェダイかどうかとかを越えて、フォース通話友達でもあり最後には同志にもなって。
その前に、レイが、母のように慕うレイアの息子であるカイロレンを仕留めてしまった時のレイの揺れる感情も良かった。あの時、カイロレンの傷を治し、ベンとして協力したかったと告げておいて大正解!殺したも同然なのに蘇らせて、レジスタンス全員を危険に晒してまで告白してるも同然だったから。
ただただフィン、残念!機転が利いて優しいジャナに癒されるんだろうな。
そして、ベンがレイを助けた時に、ベンのスカイウォーカーの血筋というか魂も、レイに流れたという事?
「血でも運命でもない。何者かは自分で決められる」と劇中散々テーマとされていながら、最後にスカイウォーカーを名乗り出すレイ。。スカイウォーカーの夜明けって、ベンが戻ってきた事よりも、レイがスカイウォーカーを継ぐ的な事なのかな。
確かに、親代わりのようにルークとレイアに教えられ諭され、パルパティーンの孫とルークもレイアも気付いていたにも関わらず、レイは愛されていたけれど、スカイウォーカー家の正式な末裔ベンは死んでしまった。命と引き換えに産み落としたルークとレイアの唯一の子孫ベンもなくなり、パドメはどんな気持ちだろう?更には、夫アナキンを堕としたパルパティーンの子孫レイが、血と人間性は異なるとはいえ、スカイウォーカーを名乗っている。
そして最終作の今作も、ツッコミどころ満載。
ハックス将軍がカイロレンを失墜させたいというしょうもない理由でスパイしていたり、資金源が心底謎のファーストオーダーの回復ぶり、でも相変わらず設計には穴があり、あの巨大空母で電波を飛ばすメインスイッチが空母の外壁のハッチの蓋にちょこっと無防備についていたり、8で多くの犠牲者を出しレイアに引っ叩かれていたポーが懲りずに今作も犠牲を出しピンチに陥ったり、そうしたらランドがものすごい数の応援を率いてきて、ファンはニヤリとワクワクするけど、隠れ一般人を集めてこんなにできるならレジスタンス最初から本気で支援を募ってやりなよと。
でも、スターウォーズ真髄はそこではなくキャラクターの心の葛藤の普遍性そのものだと言うことを監督が知っていればこそ。J.J.エイブラムスがツッコミどころに気付かないはずもなく、重責の中で優先順位をつけて内容を決めたことが伺えてそれもよかった。確かに、空母や敵機を交わしながらの飛行シーンや、敵空母に潜入するハラハラシーン、息抜きシーンでのドロイド交えた笑える会話はスターウォーズの醍醐味だけれど、敵艦隊を木っ端微塵にする作戦の緻密さがスターウォーズの面白さではないから。
おそらく、散らかさず、片付けるコンセプト。8がはちゃめちゃだったから特に。4-6は、レイアがジャバザハットに捕まったり、ハンソロが生き埋めになるし、ルーク腕切られるし、ハラハラが沢山あって、1-3もクワイガンジンを見送ったりアナキンが両足なくしたりパドメは双子を産み落として亡くなっちゃうし、新キャラにもえぐられるほど怖い事が起こっていた。7-9もJJエイブラムスが全て作っていたらそうした3作通して回収する起承転結の大きな転ができた気もするけど、7の起、8で奇(8も、歴史あるシリーズながら1作品内だけで起承転結させようと必死だったのだろう)、9で結で終わってしまった感じ。なぜか不思議と、パルパティーンの孫と聞いても、予想はしていなかったのに、全然驚けなかったしなぁ。新たに出てきた、短剣sith daggerは、レイの両親を殺した凶器と聞くと複雑だけど、原始的な場所の示し方の方がよほどツボだったなぁ、欲しい。あんなにフォースが使えて、ダークサイドもわかっても、シス語を理解するとかプログラム書き換えとかはできないんだなぁと思うと面白い。
7-9の繋がりの中で変化していった一番大きなところは、レイとレンの内面の変化と絆。失う物がない孤独故の頑なな強さと緊張感に満ちていたレイが、レジスタンスという帰る場所を得て、フィンとポーという自然に本音を交わせる仲間を得て、産まれや生い立ちに関係なく受け入れてもらえる幸せを得た。それでも、己の持つ強さをコントロールしきれるのか、何かしでかしてしまうかもという不安に怯える。一方、最初は恐らく寂しさ故の怒り憎しみ(両親レジスタンスで戦時中に産まれたら、愛を求めても軍優先の生活で放置され辛かった事だろう)を強さに変えていたカイロレンは、弱さを隠し強さを示すためにマスクをしたり、父親を殺したり、形・言動にこだわっていたが、本来の強さは揺らがない中身にある事をレイとのフォースから感じ取っていく。フォースを通じてレイの弱みも知り、付け入って挑発しながらも、それは自分の側へ引き寄せたいという動機もあり、一匹狼ではなく通じ合う相手を求めている気持ちを9で言葉に出せるようになった。彼は最初から、愛されてさえいればファーストオーダーでもレジスタンスでもどっちでも良かったような気がする。
あのパルパティーンでさえ、アナキンとルークの親子の絆には勝てなかった事を気にしていたし、誰しも内面同士の繋がりを求め、実際血の繋がりや運命関係なく繋がれる。それこそフォースのバランスなのかと。
最終的に、レイもレンも、組織からすると引く程の単独プレーが目立つが、ジェダイにもファーストオーダーにも偏る事なく、色々な違い隔たりを超えての助け合い友情愛情思いやりが存在する事を示した。勝手にファーストオーダーから抜けてただのベンになったり、敵の傷を治癒しあったり、恋愛禁止のジェダイなのに自分からキスしたりで。=フォースのバランスであり、長らく続く戦争が終わる平和であり、アナキンが成し遂げるはずがレイアの代でも難しかった事をついにレジスタンスにもファーストオーダーにも属さないただのベンが成し遂げたという事なのだろう。銀河も終戦時代に突入。現実で、終戦後70年経っても元敵国に色々思う者は尽きないのと同じように、ひとりひとりのなかには根深い思いも長く長く残るのだろうけれど。
あれだけ武力化された巨大組織がある中で、老害やしがらみを排除し、トップ同士とことんわかり合った上で、思惑や駆け引き、忖度なしでの戦争ストップ、お互いの憎しみの排除って、到底誰もできない事だと思う。現実でもみんなが平和を望みながらも、常にどこかが戦争してる理由は、まずは身を守る、不利にならないように交渉材料を身につけ、危ない時に丸腰にならない武力を持って牽制するのが普通の流れだから。
スターウォーズはフォースという要素を加えることで、それぞれに正義がある中で力がどこにも偏らずに中立に平和に使われる難しさをわかりやすく絵にしたんだと思う。フォースにバランスがもたらされるって結局、丸腰でも過ごせる、つまり誰もが誰かを攻撃したいという憎しみを抱いていない状態。そう考えると、今の日本のありがたみを、優しさが蔓延する方法でつくづく守り大切にしないといけないなと思う。
ジェダイも正論で優しいんだけど、組織の結束や、弱みを持たないために恋愛禁止だったりと、五感を研ぎ澄ますフォースを操る割に、素直な感情に蓋をさせようとしたりもする。愛を見つけたアナキンや、愛に飢えたベンソロのように反感を抱く者が出たら、そこから怒りや憎しみが湧いてきて結局争いを生む。平和のための戒律なんだけど、諸刃の剣で統治って本当に難しい。でも、9が言いたかったのは、まずは目の前の人を大切にしていけば、それが輪となり組織となり組織同士が繋がり、1つの社会になるのではということ?
しかし、人生とともに、スカイウォーカー家のみんなを見届けてしまった。長い長い家族の話。シミ、アナキン、パドメ、ルーク、レイア、ハンソロ、カイロレン。みんな大好きでした。かなり不吉な事ばかりな血筋のスカイウォーカー家の最期が、善に戻り、愛と人助けに終わり良かった。 R.I.P。
クワイガンジン、オビワン、ヨーダにもしばらく会ってない気分。
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私、10年位前から、キネマ旬報、kinenote、yahoo映画レビューなどに映画レビューを投稿しています。現在の目標は2回目のキネマ旬報掲載です。こちらのサイトには昨年2月に登録しました。
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本作、最終作に相応しい内容の作品でした。
長年観続けてきた甲斐のある作品でした。
-以上-