劇場公開日 2018年5月12日

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「美しい映像と引き締まった構成の佳品」蝶の眠り takap49さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5美しい映像と引き締まった構成の佳品

2018年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

知的

女性監督チョン・ジェウンは、デビュー作『子猫をお願い』で、高卒少女五人の厳しい人生サバイバルを容赦なく描いた俊英。

今回の作品は「メロドラマの王道」である恋愛+難病モノですが、美しい映像といい、キム・ジェウクの繊細な演技といい、小品ですが素敵な映画だと思います。

レビューに厳しい意見を書いている人は「難病の売れっ子作家」とか「万年筆がつなぐ恋の記憶」などのベタな設定が気になるのかもしれません。

たしかにベタと言えばベタなんですが、恋愛映画の王道でもあるし、また可能な限り、リアルかつ繊細に、現実感と節度をもって描かれていますから気になりませんでした。

美しい映像やキム・ジェウクの繊細な演技は見ものです。中山美穂の演技も、前半は「キム・ジェウクの演技力と比べると、ちょっと・・・」と思わないでもありませんでしたが、終盤に近づくにつれて驚くほど多彩で深い表情を見せます。この辺りは順撮りの成果でしょうか。

病気モノにつきものの愁嘆場や泣かせのシーンは可能な限り省略され、全体の構成は簡素で知的。

しかし受ける印象はドライなものではなく、映画が進行するにつれ深い感情があふれてきます。このあたりはチョン・ジェウン監督の個性でしょうか。

映画好きにもおすすめできる秀作ですが、一点、犬好きとしては、名優(犬)トンボの扱いがあんまりです。監督はぜひ、トンボのその後を描いたディレクターズ・カットを作って頂きたい。

タイトルは『蝶の眠り~犬をお願い』でよろしくお願いします。

takap49