「この後ドランに何があったのか、気になってしまう一作」グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
この後ドランに何があったのか、気になってしまう一作
本作は2017年公開であるため、日本でも話題を呼んだ『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(2018)や『マティアス&マキシム』(2019)公開前のグザヴィエ・ドランの姿を収めています。既に『Mommy/マミー』(2014)や『たかが世界の終わり』(2016)で新進気鋭の映像作家として注目を集めていたドラン監督ですが、ここからさらに映画界の頂点を目指そうとする勢い、そして彼の才能に陶酔した人々の姿など、彼に対する注目の熱さが映像を通じて伝わってきます。
インタビューなどの合間に現れる様々な作品の一場面を観ただけでも、多くの人が彼の独特の映像感覚を感じることができるはず。特に『わたしはロランス』(2012)は印象的で、短い時間の中でドラン監督の映像的魅力を味わうことができる、という意味で、本作は彼の作品に触れたことがない人にとっても、あるいは既に作品を観たことがある人にとっても、強い印象を残す映画でしょう。
そんな絶頂にあったドラン監督はその後、映画に対する失意を表明し、現在は映画監督としては引退をほのめかしています(その後復帰を目指しているという情報も)。そんな現状を踏まえてみると、本作がとらえた高揚感や陶酔は、作家としての彼にどんな影響を与えたんだろう…と考えてしまいます。
コメントする
