「日常を忘れさせる痛快な映画」ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
日常を忘れさせる痛快な映画
2D 吹き替え版を鑑賞。1995 年公開の「ジュマンジ」の続編で,ゲームのプレーヤーがゲームの世界に吸い込まれ,クリアしなければ元の世界に戻れないという設定は同じである。前作は,当時の最先端の 3D CG を駆使して動物の迫力ある映像を撮ったことで脚光を浴びたが,今見ると流石に時代の流れを実感させられるクォリティである。また,ゲームの内外で同じ俳優が演じていた。設定以外は前作との関連はないので,前作を見ていなくても特に問題はない。
前作がボードゲームだったのに対して,今作はテレビゲームに進化しており,このためゲームの中と外で役者が変わるという新たな設定が加わって,話に面白さを加えることに成功している。ゲーム内のキャラは能力や弱点がそれぞれ設定されており,現実世界と全く違った行動ができるが,人格は元のままなので,そのギャップが面白い。特に,一人だけ性別まで変わってしまう人物がいて,その行動にはいちいち大笑いさせられた。
とにかく,全編ほぼ笑いっぱなしという痛快な作品で,日常から全く隔離された別世界に浸かり切ることができる。これこそ映画の醍醐味だと思う。現実世界の登場人物の行動も,ゲーム世界でのキャラの行動も,いかにもあるあると思わされるものが次々と展開され,この脚本家はよくもまあこれだけの人間観察眼を持ち,これだけの引き出しを用意したものだと感心させられた。「パシフィック・リム」とは対極にある成功した続編ということができるだろう。
前作では,ゲーム中での時間経過がそのまま現実世界の時間経過となっているのだが,今作ではやや設定が変わっており,それがタイムパラドックスを生んで,見る者に切なさまで感じさせていたのは見事だと思った。吹き替え版で良かったと思ったのは,20 年前の流行語や時事用語などが沢山台詞で聞かれたことである。「チョベリバ」などといった死語や,シンディ・クロフォードなどという人名は本当に久々に耳にした。
俳優は,ゲームキャラの方に主力が置かれていて,肉体派のドゥエイン・ジョンソンが気の弱いオタクな性格を演じて芸風の幅を見せていたほか,メタボなオッサンなのに中身は女子高生というオベロン教授を演じたジャック・ブラックも印象に残る好演であった。ゲーム中で唯一の女性キャラを演じたカレン・ギランは「アベンジャーズ」シリーズとは違った魅力を見せており,到底 30 歳とは思えない若さに驚嘆させられた。
音楽はベテランのヘンリー・ジャックマンで,非常に手堅く正当で見事なアドベンチャー映画の音楽を書いていた。演出はリアル世界でもゲーム世界でもよく練られていて,脚本の出来の良さをしっかり活かしていた。久々に大笑いできてスカッとする作品で,ストレス解消にこの上ない。ゲームを一つでもやったことがある人には是非お薦めである。
(映像5+脚本5+役者4+音楽5+演出5)×4= 96 点。