劇場公開日 2018年1月27日

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「詩的映像美と鬼気迫る演技のコントラスト」殺人者の記憶法 石山紀子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5詩的映像美と鬼気迫る演技のコントラスト

2018年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

親と子の絆や社会現象をこういうカタチで描かれると…^^;
同じテーマだけを捉えた人間ドラマを観た後より
精神的にちょっと堪える…

韓国映画特有のストーリー展開の変化球には慣れていたはずなのに、今回は最後の最後まで振り回されっぱなし
最悪な連続殺人鬼の話なのにウルウルさせられるとは思わなかった

アルツハイマーや介護問題を連続殺人鬼と結び付けて考える
そんな視点を私は持ち合わせていないので、この映画の制作が始まった時から作品が日本に来ることを楽しみにしていたのだが…観てよかった♪
私の中では「修道士は沈黙する」に匹敵するくらい。

主人公の記憶がおぼつかなくなっていくという現象が
この作品の面白さの一つ
彼の記憶が混濁するたびに
見ている観客の思考の混濁につながる
今見ている映像は 現実に起きている正しい記憶なのか
それとも 曖昧で操作された記憶なのか
最後までその状態が続きハラハラさせられる
そして 記憶がクリアになる瞬間のラストの衝撃的な事実は
ちょっと過酷過ぎて言葉を失った

ため息がでるくらい詩的な美しい映像
緻密でよく考えられたストーリー
自爆事故のド迫力のカーアクション…
そして、主要な登場人物の配役の見事さに感服

過酷な親子関係を持つことになる娘役のキム・ソリョンは
アルツハイマーの父親を心から心配する優しい娘を素直に演じていたし、オ・ダルス氏は、凄すぎるチョイ役でムロツヨシ以上に作品に存在感を残し(彼のメインシーン、超怖かったのに何故か笑っちゃったんだよなぁ)、キム・ナムギル氏は体重を増量し、爬虫類的な不気味さで現役殺人鬼を好演。
でもやっぱり
元殺人鬼を演じたソル・ギョング氏のアルツハイマーの鬼気迫る演技は圧巻。記憶と闘っている時、そして、わざと記憶が混濁しているフリをしている時…目の表情、顔の筋肉の動き…総ての演技が真実のように見える、お見事!(彼の演技が嘘っぽく見えないから、物語に没頭出来て良かった)。

韓国映画を観るたびに
この視点、どこをどう押したら気がつくものなのか
不思議であり 羨ましく思う

この後も 日本に来て欲しい作品が沢山ある
総てが観られるかどうかはわからないけど
今年も1本でも多く
いい作品と出逢えればと願わずにいられない

石山紀子