「この世界観に引き込まれる。」海を駆ける キッスィさんの映画レビュー(感想・評価)
この世界観に引き込まれる。
いろいろな作品を見てきたが、抽象的な作品は意味が分からないなりにあれこれと想像・イメージを膨らませる作品と、ホント意味不明で支離滅裂で駄作とも評される作品に分かれるが、印象としては前者のような感じだった。
【解説サイト見る前】
海を意味するラウは何者なのか全く不明で、普段は物静かなのに時としてフラーッと思いつきで行動したり、日本語英語インドネシア語を単語単位でしゃべったり、不思議な存在。
ラウはいったい何者なのか、何がしたいのか。そのヒントとなることはあちこちにちりばめられていた気がする。ちゃんとした答えは出ていないが、想像させるには十分な量ではないだろうか。
ジャーナリストのネタパクリのくだりはすごい腹が立った。どこの国でも自分の手柄にしてのし上がっていきたい、注目されるネタをメディアに提供し有名になりたい、というのがあるんだろうね。目立たない存在、人こそ、潜在能力高いんだよね。それを知って欲しいなーと思った。
あとは純日本人、従弟のインドネシアとのハーフ、インドネシア人2人の青春的心情も言葉の壁を利用して面白く、はかなく、甘酸っぱく描かれ、これらのシーンは微笑ましてく見れる。ただ、日本人のサチコは引き込もり気味だったのもあり、しばしば空気を読まない、感情の起伏が激しく、という気難しい役どころ。
【解説サイト見た後】
パンダアチェはスマトラ地震の被害の大きかったところ。そこでNGOの職員として働く貴子とタカシ、インドネシア人たちをめぐる話。土地柄、どうしても津波の話になり、その傷を背負った人も多数。
その中でラウは、名の通り、海を象徴している存在として描かれている。時として優しく包み、また時として激しく攻撃してくる。しかもそれが気まぐれでいつどのような状況になるか予想もできない。まさにラウは普段は全く喋らず存在感すらないが、不思議な力によって少女を助けたり、瞬間移動したり、三か国語をペラペラと話したり、少年たちを水に引き込み殺すこともあり、夢を通してヒントを与えたり、急に戻ると言い出したりする。
これを「海」「津波」などと併せて考えていくと、まさに合致する。そうか、こういうことが言いたかったのか。
4人の青春群像の裏でこのような繊細な表現をさらっとやってのける監督の計算し尽くしたものを感じざるを得ない。
カンヌ映画祭である視点部門で受賞しているのも納得。
久々に長々とレビュー書いてしまった(笑)