ウインド・リバーのレビュー・感想・評価
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集団の怖さ
静寂で広大な北の雪原。人と娯楽に乏しく、そこで暮らすだけの意思と忍耐力が求められる。とはいえそんな場所は世界中どこにでもある。
ネイティブアメリカンの話らしいが、個人が集団になったときの狂気への変貌は、それこそどこにでもある。
それが、仲間や同僚が相手というのが痛い。
最後はそうなるだろうが、人間の性を見るようで悲しい映画でした。
主人公の白い防寒着は雪原では目立たない代わりに、遭難したらアウトだね。
裸足で10キロも
ある女性の殺人事件の犯人探しが主軸ではあるが、大切な娘を失った悲しみ、ネイティブアメリカン居留地の現実、厳しい人生をどう生き抜いていくかが描かれている。
娘を殺された家族の悲しみ方が、よくみる白人映画の描写とは違っていて感心した。「マスターオブゼロ 」でデフが「白人家族と違ってセックスの話を親としない」と言っていたが、私たちが普段アメリカ映画でよく見る「親との関係性」「悲しみ方」も、それぞれの文化によって、様々なバリエーションが現実には存在する。
終盤、急にけっこうな銃撃戦が起こり様相が変わってしまった。映画的には見せ場だろうけど少し派手すぎかな。雪の中からの狙撃はすごくカッコよかった。エンタメと社会派のバランスという意味では良かったのかも。
女性FBIが頼りなくてどうなのと思ったが、最後まで被害者に心を寄せていたところが良かった。運の良さなんてない場所で生き残った彼女が娘を亡くした彼には少し慰めになったのかもしれない。
スノーモービルや雪深い居留地など、ふだん描かれることの少ない生活が垣間見られたのが興味深かった。
カナダの居留地でネイティブアメリカン女性の行方不明者がものすごく多いというニュースを以前目にしたので、この主題がもっと注目され、改善されると良いと思う。この映画ではネイティブアメリカンであるがゆえ、という理由づけはなかったけど。過酷な状況は弱い存在をさらに追い詰めるのだな。
過酷
白さと静寂に息が詰まる町。
そこは運が悪いからではなく弱いから死ぬと、コリーは自らに言い聞かせるように語る。
運のせいならいつまでも割りきれないが
弱いのが理由なら人の死も諦めがつくのだろうか?
しかしこれは諦める事だけでなく己の犯した罪の正当化にも使える危険な考え方に感じた。
「あいつが死んだのは弱いからだよ」
加害者にそう言われたらどうするのか。
そんなことを考えてしまった。
単なるクライムサスペンスで終わらない重い感動
ネイティブ・アメリカンの居住区(と言うか定かでないが)、ワイオミングの僻地の雪と氷で凍てつく空気が冷たい。マイナス20度の中で走り続けると大変なことになるのですね。
永遠になくなることがないであろう「差別」を背景に、ネイティブ・アメリカンの若い女性の死の真相を追う。ジェレミー・レナーは渋いし、エリザベス・オルセンは綺麗だし可愛いし、メインの二人がいい。そして、重い結末の中に激しい感動があった。
社会派の作品としてもエンターテイメントとしてもクオリティが高く、今年のベストの一本だろう。
西部劇好きなら必見
いやぁ面白かった。 許されざる者、続夕陽のガンマン、トゥルーグリッドを足して2で割ったような映画だった。 インディアン保留地の現状を伝える社会派映画を、とても娯楽性のある現代版西部劇に仕上げたところは凄い。そう。西部劇好きなら必見。 少ないけど、まだ辛うじて上映館が残ってるので、まだ観てない方は是非。。。
☆☆☆☆ 簡単に。 ミステリーとして観たならば、それ程の深い話でも...
☆☆☆☆
簡単に。
ミステリーとして観たならば、それ程の深い話でも無い。
犯罪モノとして観たならば、犯人は直ぐに割れる。…と言うか、観客に向けて敢えて分かりやすく提示してくれる。
主人公の男の心に、深い傷を負わせた3年前の悲劇。
今それがまた、娘の友人に起こった現実の辛さ。
娘の父親へ投げ掛ける言葉は。そのまま、彼が3年前に受け取った言葉でも有る。
そう!これはお互いの親の立場が、そのまま入れ替わってしまった悲劇的な物語。
男はハンターとして、強い決意で娘の弔い合戦に向き合う。
なかなかタイミングが合わずにやっと観れましたが。シンプルで有りながらも、味わい深い作品で。スクリーンで観られて本当に良かったと思える作品でした。
2018年8月25日 角川シネマ有楽町
誇り
開拓者。言い換えると侵略者。
侵略とは、暴力、殺戮、略奪と、秩序も何もない世界です。そしてそれは、アメリカのとある地域では、今も普通に見られる光景でした。私達が散々聞かされてきた自由の国、平等な国アメリカというのは、実はごく一部の人間だけが持つ特権だったんですね。そしてこの特権は、単に先祖が侵略者だったから与えられているだけであって、本人の努力ではありません。逆に初めから特権を持たない者は、自由や平等はおろか、安全すらも手に入れる事は難しい。それが、アメリカなんですね。
まるで、墓場の様な場所に強制的に居住させられたネイティブ・アメリカンは、彼らに脈々と受け継がれてきた「誇り」ですらも、根絶やしにされていました。種を繋ぐことはただ単に子供を残すことだけではなく、その民族の持つ「文化」「生き方」「哲学」をも繋ぐことです。つまり、自分達の「アイデンティティ」を繋ぐことなのです。だからこそ、「アイデンティティ」を失った彼らネイティブ・アメリカンの絶望は、計り知れないものがあります。
気がつけば日本も、沖縄やアイヌの「誇り」を奪う様なことを現在進行形でもしているのではないのでしょうか。この作品を鑑賞して、そんな疑問が浮かび上がってきました。アメリカの問題を自国の問題として置き換えてみた時に、何かしらの事は感じるはずです。
勇敢な
広大な大地で殺人が起きる。
ネイティブアメリカンの女性の失踪率は不明。
話が進むうちに現在進行形の事件と過去の事件が
クロスする。
なぜ死んだのか。
なぜレイプしたのか。
なぜハンターなのか。
最後にはわかる。
考えさせられる。
私たちの常識が常識でない所が多々ある。
“俺たちほど強くない。”
この強さは観客にとっては多分普通。
でもそこに住んでみたらその強さを持つのって維持するのって大変なことなのかも。
広い。
時が癒すんじゃない。痛みに慣れるだけだ。
世に、復讐劇の物語はごまんとある。ラストまでサスペンスに満ち、行き詰る捜査に焦れ、怒りに震え、被害者遺族に共感と慰謝の気持ちで労わろうと寄り添い、対して、快楽に溺れた犯罪者に嫌悪を覚えるのはどれも同じだ。先住民に対する偏見や差別なども含め『レヴェナント』を思い出させる映画でもあった。
だけど、この映画の静けさは何だ?主人公ジェレミーの冷静さもどこから来るのだ?、そんな小さなしこりが、物語の進行とともに僅かずつ明かされていく。
被害者の父が、娘の不幸を目の当たりにしながらも毅然とした態度でFBI捜査官の訪問に接していた時、ジェレミーがやってきた。この場面が秀逸だった。なにも語らない。ただ、お互いの気持ちを知り尽くしている者同士の咆哮が、そこにあるだけだ。そしてジェレミーは言う、「時が癒すんじゃなく、痛みに慣れるだけ。痛みから逃げるな。逃げると大事なものまで失う」と。そのシーンで、ジェレミーの家族の過去の出来事もわかる。それがまた見ていて辛い。
ラスト。結局、取り戻せないものはどうしようもない。そことどう向き合っていくのか。そんな心が折れそうになりながらも、逃げたらすべて失ってしまうぞ、と自分にはっぱをかけながら、歯を食いしばって生きていく二人を後ろ姿が痛々しくも気高かった。
不覚にも居眠りしてしまった
薬物中毒の家に捜査に入ったり、捜査シーンもたついてるあたりで居眠り始めたようで、気づいたら事件真相シーン!
ちゃんと大事な部分見落としてなければいいのですがだいたいストーリーは理解できたと思います。
男性主人公の娘の死因は見落としたかな。
私の知識、勉強不足かもしれませんが、この1件の事件だけでネイティブアメリカン女性の失踪などカウントされてないという問題に、直結することが難しかったです。
同じアメリカのかたが見ればもっと入っていきやすいのかもですね。
殺されFBIが捜査すればカウントされてるのでしょうか。
問題提起のパワーの強い作品。
ウィンドリバーと呼ばれるネイティブアメリカン居留地で起きる少女の殺人事件を追う現地のハンターと、ひとりの女性FB Iとの、壮絶な、解決に向けた戦いに挑むおはなし。
これといって説明的な描写がないまま、出来事としてネイティブアメリカン居留地特有の事象がおきるので、あとからとても気になってくる。
私はネイティブアメリカン居留地については米ドラマなどで見聞きした程度だったので、こういう実情があるのか、と、映画を観た後、いろいろ調べてしまった。
こういう現実はついつい、見たとしてもそのあと忘れてしまい、ということを繰り返してしまう。
それがさらにその地域やそこに住む人々の不幸を生むことになるのだろう。
事実を知らない人にとってはそれを知る機会に、知る人についてはそれでも動いていない自分自身を見つめる機会となり、問題提起する作品としてとても学びのある映画。
自分がいかに作られた世界の中で、ぬくぬくと暮らしているのか分かる。そういう世界を作り上げるために犠牲になっている人がいることを、まずはきちんと認識したい。
それにしても強いひとというのは魅力的。やはり自分のためでなく、人のために誇りを持って動いているからこそ強いひとなんだろうなぁ。
銃声だけが響く沈黙の土地
空調の効きすぎて冷え冷えとした映画館でブランケットを借り、ホットコーヒーをすすりながら鑑賞したのは良かった。
先住民が暮らす雪深い土地で、静かにゆっくりとストーリーは進んでいく。この土地に住む人々の閉塞感を表しているかのように。全てが沈黙している。銃声の音だけが沈黙を破る。
主人公の男が終盤に語る台詞が好き。
この土地には運の良し悪しなど関係がない、強い者だけが生き残るのだ。
ジェレミーさん、とってもかっこいい俳優さんでした。
心優しく腕の良い狩人さんとなり、悪者たちをばっちり狙撃してました。
FBI役のエリザベスさんも、素敵でした。強く真面目な女は最高〜!!
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