「これは忘却されたアメリカの歴史や魂の物語でもある」ウインド・リバー ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
これは忘却されたアメリカの歴史や魂の物語でもある
これまで2度にわたり“世界の果て”とも言える場所から現代アメリカの姿に光を当ててきたテイラー・シェリダンが、フロンティア3部作の最終章となる本作では脚本執筆だけにとどまらず、ついに監督までを買って出た。それだけでも彼の意気込みが伝わってくる。
舞台はネイティブ・アメリカンの保留地。いつもながらに、登場人物にも増して強烈な「土地」の持ち味がそこに住む人々の人間性を決定づける。苦しみや悲しみと共に生きる主人公(レナー)、経験は浅くても胸の内に強いものを秘めたヒロイン(オルセン)、二人が巻き起こす化学変化が力強く物語を前に進ませていく。前作『最後の追跡』と同様、本作もまたアメリカ映画が描いてきた「西部劇」が現代の視座、関係性の元でアップデートされたかのよう。シェリダンが描きたかったのは、忘れ去られたアメリカの歴史と魂なのだ。いま彼の作品が米映画界で大きな注目を集める理由もそこにあるのだろう。
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