劇場公開日 2019年1月26日

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「絶対の善も絶対の悪もない」デイアンドナイト ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5絶対の善も絶対の悪もない

2019年2月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

自動車の安全データの偽装をめぐる人間ドラマ。不正を告発したら村八分にされ、自殺に追い込まれる主人公の父。閉鎖的な社会では和を乱す奴が悪人扱いされてしまう理不尽。実際、この映画の舞台の地方都市は、大手自動車メーカーによって経済基盤が成り立っているようなので、もし不正が世間に暴かれ、倒産したら多くの失業者が出てしまうのだろう。不正を隠蔽する自動車メーカーの幹部が、家では良き夫、良き父であるのも興味深い。悪事を働く人間も、1人のちっぽけな人間にすぎない。

主人公は養護施設存続のために車の盗難に身を染める。善の目的のために悪の手段を用いる。絶対の善も絶対の悪もなく、2つはないまぜになり、それぞれの人間に矛盾を背負わせながら社会が営まれている。
同じく安全データの偽装を題材にした『七つの会議』と合わせて観ると一層面白くなると思う。不正は告発しただけでは終わらず、むしろその後の方が大変だと思い知らされる作品だった。

杉本穂高