劇場公開日 2017年12月16日

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「飛びます、飛びます」花筐 HANAGATAMI kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0飛びます、飛びます

2019年8月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 大林監督が原点に戻ったような雰囲気の色使い。すぐに思い出したのは『HOUSE ハウス』(1977)だった。調べてみると、檀ふみの父親でもある原作者の壇一雄さんは山梨県都留市とあるので何だか懐かしくなった。都留市出身なんて根津甚八くらいだと思ってたのに。そんな壇さんも肺がんで亡くなり、同じく余命宣告された大林監督も肺がんという共通点があり、映画化する資格をもらったと言わせたとか。

 舞台は第二次大戦直前の佐賀県唐津。アムステルダムに住む両親の元を離れ、唐津に暮らす叔母の家に身を寄せていた榊山俊彦の物語。肺病を患い、従妹にあたる美那にほのかな恋心を抱きながらも、学友の鵜飼、吉良、阿蘇と仲良く青春を謳歌し、女友達の千歳やあきねとも交流してゆく。しかし、時代は軍国主義一色の時代。やがて彼らも茶色い戦争に染まっていくかと思われたが・・・

 吐血、バラの花びら、指の血、とにかく赤い色を中心に、海に浮かぶ孤島と大きな月。幻想的な中に若者たちの虚無感と自由な死生観が絶妙なタッチで描かれていた。戦争というものはすべてを破壊する。彼らの友人、女友達、身内の美少女と麗しき叔母。直接の戦争を描かずに、赤紙や出征する少年兵の亡霊のような行進が気味悪さを強調する。また、学友たちの“性の象徴”として存在していた美那(矢作穂香)が抽象的ではあるがアイドルとして君臨する。

 76年後にその家を訪れる俊彦。誰もいない空き家となった家で「お飛び、お飛び」と発する母の言葉がこだまする。複雑な人間関係の中にいても、一人浮いていた道化役のような阿蘇やあきねの存在も素晴らしい。もっとも心地よかったのは戦争で死ぬくらいなら自由に死にたいという気持ちが伝わってきたことだろうか・・・

kossy
こころさんのコメント
2021年5月11日

kozzyさん
コメントへの返信有難うございます。
独創的な映像と色彩にインパクトが有りますよね。もう新しい作品がも観られないという事が、本当に残念です。

こころ
こころさんのコメント
2021年5月10日

kozzyさん
大林宣彦監督の作品は、独特な描き方で難解な作品が多いと感じますが、観終わった後にズシンときますよね。

こころ