「戦争は“魅了”する」花筐 HANAGATAMI komacさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争は“魅了”する
「電気紙芝居」的な合成画面に膨大な台詞、過剰なロマンティシズムとエロティシズムを投入した怒濤の二時間四十八分。長尺を意識する暇もないすごい力技で、込められた表現へのエネルギーに圧倒されます。三十、四十の役者が演じる学生たちに違和感を感じるのは最初だけ、あっというまに大林マジックに巻き込まれ、主人公たちの疾風怒涛の青春に飲み込まれてしまいます。唐津おくんちの生命力溢れる映像に、執拗に描写される戦争の暗い影、吸血鬼映画的なエロスがミックスされ、生と死と愛の一大パノラマが展開。「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」という台詞もあるけれど、単純に戦場で死ぬということだけではなく、戦争に侵食された時代の中では、日常においても死の影にからめとられていくことも描きます。戦争はエロスとタナトス表裏一体となり、人間を“魅了”していくのです。めくるめく強靭で潤沢なイマジネーションの洪水の中で、常盤貴子と門脇麦が、大林マジックに拮抗するかのような存在感で輝いていました。一年の締めくくりににすごい映画を見られて良かったな。あきね役の山崎紘菜ちゃんはどこかで見た顔だと思ったら、東宝シンデレラだったのね。
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